<社説>日米首脳会談 沖縄にも民主主義適用を

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 菅義偉首相とバイデン大統領は首脳会談で、普天間飛行場の危険を除去するため辺野古新基地が「唯一の解決策」であると、改めて確認した。 沖縄の民意が繰り返し無視される状況で、民主主義とは何かを両首脳に問いたい。そして日米が共通の価値観とする「民主主義」を沖縄にも適用してもらいたい。

 首脳会談を受けて発表された約5800字の声明に「民主主義」「普遍的な価値」という表現がそれぞれ4回出てくる。安全保障、経済、気候変動、さまざまな課題に対して、両国が手を携えて課題解決に当たる決意を示すものだ。

 しかし沖縄、特に辺野古の問題で日米両政府は「決まったことだから」と思考停止していないか。

 県内では国政選挙や県民投票で辺野古新基地を拒否する民意が繰り返し示された。

 米会計検査院(GAO)は、地元での反対を理由に米議会宛の報告書で「政治的に持続困難」と指摘した。米有力シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)は、軟弱地盤の存在などを理由に新基地の完成を困難視している。

 そもそも軟弱地盤の上に造られる基地は沈下して機能不全に陥る可能性が高い。膨らみ続ける工費や先の見えない工期など、数え切れないほどの問題が山積している。

 民主主義に基づく意思表示を無視するのであれば、我部政明琉大名誉教授が指摘するように「日米の言う民主主義は、沖縄に適用されていない」ことを内外に示したのが今回の共同声明といえる。

 一方、台湾有事を念頭に置いた声明の内容に、沖縄からは不安しか残らない。

 安全保障の分野で、対中国を念頭に「台湾海峡の平和と安定の重要性」で一致し、半世紀ぶりに台湾情勢に言及した。尖閣諸島周辺や南シナ海での中国の一方的な行動が続いている。

 声明では、日米同盟と地域の安全保障を強化するため「日本は自らの防衛力強化」を決意したという。

 先島で進む自衛隊配備のさらなる増強をはじめ、本島や周辺空海域では米軍との共同訓練、米軍基地の共同使用など負担増につながる可能性が読み取れる。

 米国はアジア太平洋地域への中距離ミサイル配備計画を進めている。仮に沖縄に配備されれば攻撃対象となる。米中対立が激化し、有事となった場合、真っ先に標的となるのは沖縄の米軍基地であり、国境を接する島々だ。

 しかもバイデン大統領は「核を含む」能力を用いて日本防衛への支持を表明した。米国に追随する軍事力強化は国民の安全、地域の安定を逆に危機にさらしかねない。

 人権問題では厳しい対応を迫るにしても、日本と中国は経済的に共存関係にある。米中両国に自制を求め、力に頼らない平和外交によって解決を目指すのが憲法9条を持つ日本の役割のはずだ。