大阪・ミナミ「カニのオブジェ」破壊犯が“出頭” 被害社長はキリストの教えで被害届取り下げ

キリストの教えで許された…(写真はイメージ)

大阪・ミナミのカニ料理店「大阪かに源道頓堀店」前にあったカニのオブジェが2人組の男に壊された事件で、20代の男性2人が店を訪れて謝罪していたことが18日、分かった。コロナ禍で人々は抑圧された生活を送っている。店も時短や休業などを余儀なくされ、経営が苦しくなっている。そんな状況で起こった事件だったが、店の運営会社社長は謝罪を受け入れ、彼らを許したのだ。社長が本紙にその心を語った。

事件があったのは5日午前5時前のこと。2人組の1人がはしゃいだ様子でオブジェの台座を蹴ったり、傾けたりした後に倒壊させ、走り去る様子が付近の防犯カメラに写っていた。

府警南署が器物損壊容疑で捜査していたが、2人が8日に店に謝罪に訪れた。その後、オブジェの制作費165万円を弁償したことから、店は被害届を取り下げた。

同店の運営会社の武田源社長は「謝りに来た2人に『何でこんなことしたんや』って聞いたら、『コロナで働いてた店をクビになり、ムシャクシャしてやった。こんな騒動になると思わなかった』って言うてました。次の日には親も来て、泣きながら謝っとる姿を見るとね」と振り返る。

武田社長は敬虔なクリスチャンだそうで「キリストの教えは『許し、愛する』こと。この子らも『教会に行きたい』と言うから、その次の日曜に一緒に行きましてね。そういう経緯もあって、彼らのことを信じて許すことになったんです」と明かした。

寛大な対応を見せた武田社長は、2人について「時短で店をクビになって、ムシャクシャして酒を飲んでやってしまった。やったことはけしからんけど、彼らもコロナの被害者なんですよ」とも語る。

大阪市中央区は昨年11月から現在に至るまで、営業時間の短縮を要請されている。中でも、「かに源」のあるミナミエリアは、昨年8月の第2波の際にも休業を求められている。

「要請に従ってるけど、支援金なんて全然来ないですよ。市役所に電話しても、突っ込んで話を聞いたら切られてしまうしね。コールセンターの人間も委託で来てるだけやから、彼らにも分からんのですよ。ウチの周りの店でも『もう持たん』と閉店するところは多いし、もうボロボロです。でもね、そんな中でも助け合っていくのが精神やと思ってます」

今回の事件は武田社長の寛大な対応で幕引きとなった。しかし、大阪府は18日、新型コロナウイルスに過去最多の1220人が感染したと発表。コロナの影響が長引く中で、こうした事件が続発しないことを願うばかりだ。

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