吉村大阪府知事〝まん防〟要請に時短店主から怨嗟の声「潰れろってことか!」

吉村大阪府知事

新型コロナウイルスの新規感染者が連日で全国最多を記録するなど、感染が急激に拡大している大阪府が31日、新型コロナ対策本部会議を緊急開催。国に対し、「まん延防止等重点措置(まん防)」の適用を要請した。政府は適用する方針を固め、1日の政府対策本部で正式決定する。全国初となるが、専門家はその効果に懐疑的な見解を示した。

2月末で緊急事態宣言が解除された大阪府だが、3月中旬以降、気温の上昇に春休みや歓送迎会が重なり、人の動きが活発化。年末年始の第3波と比較しても“過去最大”のペースで感染が急拡大している。

この日、新規感染者は599人を記録。前日に続き全国最多となった。6割近くを20~30代が占め、60代以上も増加。重症病床使用率が4割を超えるなど、医療提供体制にも負担がかかっており、今月中旬から下旬には「大阪モデル」の非常事態の基準に達するとの見通しだ。

こうした状況に、吉村洋文知事は「若い人に感染が広がると、その後に高齢者に広がる。今後も感染状況(を示す指標)はまだ伸びるだろう。大阪での過去最多の654人を超えてくるだろう」と危機感をあらわに。「変異株の割合も増えてきている。強い危機感を持って対応していきたい」とまん防の適用要請を決定し、遅くとも週明けの5日から3週間程度の適用を求めた。対象地域は大阪市となる。

全国初のまん防適用となりそうだが、かねて「感染者を減らす効果は期待できない」との考えを示していた医学博士で防災・危機管理アドバイザーの古本尚樹氏は「緊急事態宣言よりも弱く、大きな効果はないだろう。緊急事態宣言でも下げ止まりで、何をどう我慢するんですかってなる。感染者を減らしたいならロックダウンしかないけど、今はやるつもりはないだろう」と指摘する。

まん防適用となれば、府は大阪市内の飲食店に対する午後9時までの営業時短要請を午後8時に前倒しする。北区、中央区の飲食店では昨年11月末から時短要請が続きっぱなし。ある店主は「要請を守ってるところと守ってないところがあり、守っているところに一律に頑張れというのは限界がある。規制をかけるなら守っていないところを精査して規制しないと、もう耐えられないですよ。潰れてくれと言ってるようなもの」と言う。

吉村氏は飲食店にアクリル板やCO2センサーの設置を求めるほか、利用者に会話の際はマスクをする「マスク会食」の義務化も検討している。ただ、医療関係者からは「食べる時はあまりしゃべらないようにするというのは必要だろうけど」と、それよりも“黙食”を勧めるべきとの声も上がっており、古本氏もこれに同調する。

「マスクをしようが、消毒しようが、会食すれば感染する時は感染する。義務化して過料を科すならともかく、何を意図して言っているのか分からない。吉村氏も周りの人たちも本当に実効性があると思って、今さらマスクの義務化と言っているのか疑問だ」

古本氏がこう話すのは第4波の襲来となっても、いまだに第3波までと同じような対応をしているからだ。

「感染者を減らすなんていうのは初期段階の話。変異株は従来のものより20%感染力が強いと言われていて、重症化しやすく治りにくい。そうなると病床数も逼迫する。患者を受け入れると医療機関は赤字になるから、医療機関に対する支援に力を入れるべきだった」(同)

それと併せてやらないといけないのがワクチン接種だろう。

「本当に必要な人に接種できるよう要請する。ワクチンのトリアージということになるが、優先してワクチンを回してくれとか、そういう話をしないといけない。必要な医療機関に重点的に振り分ける方が効果的でもある。それこそ知事がするべきことではないか。第4波にもなって同じようなことをしていて、ベクトルの向きが違うんですよ」と古本氏。

まん防はあまり期待できないかもしれない。

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