まず注目されるのがW杯だ。ESLに反対するFIFAは1月に先手を打ち、各大陸連盟と共同で声明を出してESLに参加するクラブの所属選手はW杯やその予選、大陸選手権への出場禁止を決定。今回のESLの発足を受け、欧州サッカー連盟(UEFA)は改めてこの方針を強調した。
これに対して、ESL側も動いた。米紙「ニューヨーク・タイムズ」によると、国際大会からの締め出しは違法にあたるとしてESLが嘆願書を複数の裁判所に提出し、提訴する構え。訴えが認められれば、ESL参加選手も代表の公式戦に出場できる道が開ける。
それでもW杯への出場が認められない場合は、さらなる強硬手段も準備。ESLは「UEFAやFIFAによる制裁措置として、W杯への出場が許可されない場合は、独自のW杯を創設する」と表明し、今度は〝新W杯構想〟までぶち上げた。
この問題が解決しなければ森保ジャパンへの影響も必至。ESL参加クラブであるレアル・マドリードは現在ヘタフェに期限付き移籍中のMF久保建英(19)、リバプールもサウサンプトンに移籍中のMF南野拓実(26)をそれぞれ保有しており、W杯開催時に復帰していれば、同じ理由で出場できないことになる。
また、ESL参加クラブの国内リーグへの出場も大きな懸案だ。ESL参加クラブは加盟する各国リーグ戦には従来通り出場を希望しているが、UEFAは断固拒否。参加クラブが所属するイングランド、スペイン、イタリアの各サッカー協会、各リーグが共同で声明を発表し「大会の創設を防ぐために連合する」とした上で、代表の国際試合だけでなく「国内リーグの参加も禁止する」と宣言したのだ。
ただ、これはもろ刃の剣となりかねない。ESL側にはかねて参加クラブの門戸を広げる構想があり、欧州各国の人気クラブを幅広く引き抜く可能性も。各リーグの人気クラブが離脱すれば、リーグ収入は激減するだけに、各国リーグがESL側に寝返ることもあり得る。
さらに欧州事情に詳しい代理人が「本当に分断することになったら、それぞれが選手を囲うような事態も考えられる」と指摘するように、移籍市場も大混乱に陥る。両勢力の対立が深まれば、クラブ間の交渉が必要な大多数のケースで、ESLに所属するクラブが参加しないクラブとの交渉を閉ざすことも考えられる。逆もまたしかりだ。
例えば今夏の移籍市場ではフランス1部パリ・サンジェルマンのFWキリアン・エムバペ(22)やドイツ1部ドルトムントのFWエーリングブラウト・ハーランド(20)が注目されるが、現状では新リーグに参加しない両クラブがESLの価値上昇を防ぐために移籍先候補から参加クラブを除外する可能性もある。
世界のサッカーシーンが一変してしまう新リーグはこのまま発動するのか。今後の動向から目が離せない。