30代夫婦「流行りに乗って投資を始めたけど、どこまで運用に回せばいい?」

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
5歳のお子さんを育てながら、夫婦で小学校の教員をしている相談者。資産運用を始めたものの、教育資金や老後資金が足りるのか、どこまで運用に回していいのかわからないといいます。FPの氏家祥美氏がお答えします。

何となく流行にのって資産運用を始めたのだが、教育資金や老後資金のために足りるのかが分からず、どこまで運用の方に回せばよいのかわからない。生活をもっと切り詰めないといけないのか不安になってしまう。きりがなく結局安心感が得られない。

【相談者プロフィール】

・男性、34歳、公務員、既婚

・配偶者の年齢:33歳

・子どもの人数:1人

・子どもの年齢:5歳

・同居家族について:妻、33歳。夫婦で小学校教員。保育園通いの息子(5歳)

・住居の形態:持ち家(戸建て、埼玉県)

・毎月の世帯の手取り金額:55万円(夫30万、妻25万)

・年間の世帯の手取りボーナス額:210万円

・毎月の世帯の支出の目安:31万円

【毎月の支出の内訳】

・住居費:7万8,000円

・食費:8万円

・水道光熱費:2万円

・教育費:2万円

・保険料:火災地震年間2万円、自動車二台分年間6万円、生命保険二人分年間11万円

・通信費:3,000円

・車両費:6,000円(ガソリン)

・お小遣い:小遣いシステムではないので0

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:15万円

・ボーナスからの年間貯蓄額:90万円

・現在の貯蓄総額:700万円

・現在の投資総額:570万円

・現在の負債総額:住宅ローン2,300万円、奨学金100万円


氏家:こんにちは、このたびはご相談いただきありがとうございます。流行りにのって資産運用を始めたものの、教育資金や老後資金と投資資金をどのようにすみ分けたらいいのか分からないということでしたね。そのために、生活費をもっと切り詰めないといけないのか、不安に感じていらっしゃるということでした。

「投資=老後資金準備」と考えて

最初にお伝えしたいのが、投資は無理をして行うものではないということです。当面使う予定のない余裕資金や、実際に使うまでに年数がある老後資金などを運用に回すことで、より経済的な余裕を得るためのものですから、無理のない範囲でゆったり気長に行うものと思っておきましょう。

それから、老後資金を投資で準備すればいいので、老後資金と投資資金を別々に用意する必要はありません。そのあたりを整理すると、だいぶ楽に考えられるようになるはずです。

人生の3大資金を整理する

毎月の家計が収入の範囲内で収まって黒字になっているので、あとは将来のライフイベント資金の目途が立てば、もやもやした不安は解消できるはずです。ライフイベント資金の主なものは、「住居費」「教育費」「老後資金」です。順番に考えていきましょう。

(1) 住居費
すでにマイホーム(一戸建て)を購入済のご相談者さんですから、これから頭金等を用意する必要はありません。月々のローン返済額は7万8,000円。現在ご相談者さんが34歳、パートナーが33歳ですから、仮にこれから30年間ローンの支払いがあるとしても、60代中旬にローンの返済が終わる計算です。現在のペースでたんたんと返済を続け、タイミングを見て預貯金から少し繰上げ返済をすれば、住宅ローンを老後に持ち込まずに済むでしょう。

(2)教育費
お子さんは現在5歳で保育園に通っています。幼児教育保育の無償化の対象年齢であるので、教育資金はあまりかからない年代ですね。このまま公立小学校に進学すれば、その間も教育費はあまりかかりません。なにより、ご相談者さんのご夫婦が小学校の先生ということなので、家庭内の教育環境は万全だと思います。

中学校以降、どこかのタイミングで私立への進学を選ぶこともあるかもしれませんが、仮に月10万円ずつ教育費として拠出できれば、それだけで年間120万円となり、私立大学文系の学費が捻出できます。高校や中学で私立に通う場合も同様に考えられます。現在、毎月15万円ずつ貯蓄できているということなので、教育費のピーク時には将来のための貯蓄を一時的にストップして、教育費に回せば、教育費でさえもその時の家計から捻出できると考えられます。

現在5歳のお子さんが4年制大学を卒業するとして、子育てはあと17年と考えられます。ご相談者さんはいま33歳ですから、50歳の時に子育てが終わる計算です。

(3)老後資金
子育てが50歳で終わってからは、教育費の負担がなくなるので、そこから老後資金の貯め時がずっと続きます。ご夫婦で退職金を受取り、年金を受取り、ローン完済済みのマイホームもお持ちとなると、そもそも老後資金をそんなに用意する必要が無いのですが、仮に定年を60歳としても、50歳からの10年間は老後資金準備に集中できる期間があるということになります。

貯蓄や投資は、ペースダウンしても大丈夫

今回のご相談内容は、「生活をもっと切り詰めないといけないのか不安」ということでしたが、結論を申し上げると、そんなにがんばる必要はありません。

ご相談者さん夫婦にとって大切なのは、「二人で協力して働き続けること」「お子さんを育てながら家庭を守ること」です。先生という責任の重いお仕事のなかで、大変なこともあると思います。そのような時には、多少お金を使って家事や子育てを外部サービスなどに頼っても大丈夫です。疲れをいやし、家族の時間を取るために、余暇やレジャーにお金を使っても構いません。

無いよりも怖いのは、頑張って家計を切り詰めるあまり、ストレスを感じてしまうこと。それにより、夫婦のどちらかが体調を崩したり、夫婦仲が悪くなったり、仕事を続けられなくなってしまうことが一番よくない展開です。

現在、毎月15万円ずつ貯蓄をされています。これだけでも年間180万円の貯蓄ができていますね。さらにボーナスからも貯蓄しているはずですし、教育費がピークになるまでの間はほぼこのペースが続くはずです。

そんな状態ですから、もし、いまの節約状態が困難であれば、仮に3万円生活費を増やして貯蓄額を減らしたとしても、全く問題はありません。どうぞ安心して、毎日の暮らしを楽しんでください。

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