暗号資産(仮想通貨)市場は転換期!今なにが起こっているの?足元のニュースを一挙おさらい

新型コロナウイルスの発生から1年以上が経ちました。感染動向は変異株の発生により厳しい状況の国がある一方で、ワクチン接種が急速に進んでいるアメリカでは数十年ぶりの強い経済指標が出るなど、各国で差ができてきています。

このような経済が混乱に陥る中でも、世界の株式市場は大規模な金融緩和を背景にいわゆる「ゴルディロックス相場」、適温相場の様相で堅調に推移しています。

この投資の盛り上がりは、株の世界だけでなく暗号資産(仮想通貨)の世界にも広がっています。ビットコインは2017~2018年のブームの際に一躍有名になりましたが、今回のブームでも暗号資産の筆頭として相場をけん引しています。

今回は、2021年に入り更なる高騰を見せている暗号資産市場について見ていきましょう。


ビットコインは一時700万円台突破!アルトコインも急上昇!

ビットコインは、2017年末から2018年初頭にかけて一大ブームとなりました。日本でも投資に馴染みのなかった層にまで広がり、“億り人(資産が億を超えた人)”が誕生するまでに至りました。しかし急速に上昇した相場はあえなく急落し、2018~2019年は日本円で30万円台から150万円台のレンジでの推移が続きました。

しかし2020年に入り状況が一変します。株式市場と同様、世界的な金融緩和を背景としたコロナショックからの急回復で、暗号資産市場も大相場へと発展しました。

この1年間のチャートを見てみると、ビットコインの価格は2020年の間に前回ブーム時につけた高値まで回復し、2021年に入るとさらに急上昇していることがわかります。2020年の安値はコロナショック時の40万円台で、終値は300万円近辺であったため、それだけでも安値から約7倍以上の上昇です。2021年に入ってからも節目を続々と突破し、ついに4月15日には日本円で700万円台をつけました。

また、ビットコインだけでなく、アルトコイン(ビットコイン以外の暗号資産)の上昇も目立っています。価格が急上昇したビットコインでも、暗号資産の時価総額上位銘柄を見ると、その上昇率は相対的に控えめなものです。最近急騰したドージコイン(DOGE)に至っては、年初は0.5円程度だった価格が40円台後半まで上昇し、約80倍以上と驚異的な上昇率となっています。

このように株式や為替等では実現が難しいような値動きが短期間で発生するところが暗号資産投資の大きな魅力かもしれません。

一方で、価格の変動の大きさには注意が必要です。試しに価格のばらつきを示す標準偏差を平均値で割った変動係数で比較してみましょう。変動係数は数値が大きいほどばらつき、すなわち価格の変動が大きいことを意味します。

暗号資産の代表格のビットコイン、イーサリアム、バイナンスコインと日経平均株価、NYダウの3月の値動きを比べると、暗号資産の変動の大きさがよくわかります。2つの株価指数の変動係数が0.02程度である一方で、暗号資産は約0.07~0.09と4倍ほど大きくなっています。

短期間で大きく値動きする可能性があるということは投機的な目的ではメリットのように思えますが、上昇だけでなく下落の可能性もはらんでいることには十分留意が必要でしょう。

<写真:UPI/アフロ>

投資主体の変化・利用用途の拡大から期待感が強まる

今回のブームの要因は何なのでしょうか。それは、世界的な金融緩和を背景とする金余りもさることながら、投資主体の変化と利用用途の拡大が挙げられます。

まず、投資主体の変化の点では機関投資家の参入がポイントです。前回の2017年のブームの際は個人投資家が主体で、レバレッジをかけた活発な取引によって市場が盛り上がりました。しかし今回のブームでは、機関投資家による比較的長期的な視野の資金が流入してきています。世界的な低金利により運用難となる中で、流動性も徐々に高まってきている暗号資産は新たな投資対象として注目されつつあります。

イーサリアム先物やカナダで初めて上場したビットコインETFをはじめ、アメリカでもビットコインETFの上場が期待されており、今後更なる金融商品の拡張により投資家の拡張は更なる相場の盛り上がりの材料となるかもしれません。

加えて、2021年に入り利用用途も本格的に拡大しています。とりわけイーロン・マスクCEO率いるテスラの動向は大きく影響を与えています。2021年1月につけた高値を再度ブレイクした2月の上昇劇は、テスラが2月8日に15億ドルのビットコインを購入したことがきっかけと言っても過言ではありません。

その後も3月に入り、電気自動車の決済にビットコインを利用できるようにするなど、着実に施策を進めています。最近ではドージコイン(DOGE)もイーロン・マスク氏のツイートで急騰しており、同氏は現在、暗号資産市場に多大な影響力を持っています。

このように、現在の暗号資産市場は一人の影響力のある人間によって価格が大きく左右してしまう脆弱性を有しており、価値貯蔵あるいは決済手段としての安定性には欠いています。

とはいえ、米ペイパルが決済サービスを開始したほか、クレジットカード大手のVISAも決済に乗り出すことを発表するなど、着実に事業者による決済事業への進出が進んできています。

いままでは期待でしか語られていなかった暗号資産の用途が現実的なものになっていることも相場の追い風となっているでしょう。

コインベースの上場で新展開?規制等の動きにも注意

4月15日には暗号資産取引所のコインベース(COIN)がナスダックに上場しました。なんといっても株式市場に上場したことは米証券委員会(SEC)によって信頼できるインフラとして認められたとも言えます。暗号資産のプレゼンスが向上しつつある1つの証左ではないでしょうか。

先ほどまでも触れているように、暗号資産にとって追い風と言えるニュースが多い2021年ですが、一方で4月16日にトルコの中央銀行が暗号資産による決済の規制に言及するほか、米SECも規制への動きが見られ、当局が取り締まりを強化する動きを見せていることも否定できません。

前回2018年に“バブル”がはじけたのも、中国による規制強化が火種の一つになったとも言われています。マーケット参加者が楽観的になっているときほど、国や中央銀行など市場全体への影響力が大きい主体の動きには注意が必要です。

最近では暗号資産の与える影響は暗号資産市場にとどまらず、世界のマーケットにも広がってきています。暗号資産の興味が強くない方でも、新たな時代を感じさせるこのタイミングで情報を集めてみてはいかがでしょうか。

<文:・Finatextホールディングス アナリスト 菅原良介>

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