長崎ペンギン水族館開館20年 海外も注目 「長崎方式」飼育で健康維持

飼育や繁殖方法の試行錯誤を続ける田崎館長。フンボルトペンギンたちに優しいまなざしを向ける=長崎市、長崎ペンギン水族館

 9種類のペンギンを飼育し、飼育種数で世界一を誇る長崎ペンギン水族館(長崎市宿町)が22日、開館20周年を迎えた。現在173羽を飼育し、約8割は“長崎生まれ、長崎育ち”だ。健康を維持して繁殖の確率をどう上げてきたのか。舞台裏には、日光浴や運動を取り入れた独自の飼育方法「長崎方式」があった。
 ペンギンの飼育は1959年に開館した旧長崎水族館から始まった。98年に経営難で閉館したが、市がペンギンなどを譲り受け、2001年4月、人気だったペンギンに特化して現在の水族館がオープン。一般社団法人長崎ロープウェイ・水族館が運営している。

■課題解決
 繁殖は旧水族館時代から取り組んでいるが、田崎智館長(36)は「ペンギンに限らず、動物は心も健康状態も良好でなければ繁殖は難しい」と話す。
 飼育下では、狩りをする必要が無いため運動不足になり、筋力が落ちて健康状態は悪化する。室内で飼育すると日光も当たらず、ストレスも多くなる。
 課題解決に向け、1963年、南極周辺の諸島に生息するキングペンギンを、気温が低い1月から約2カ月間、日中に屋外で飼育する「長崎方式」を始めた。
 ペンギンは室内から屋外の飼育場まで約100メートルを歩いて移動。日光を浴びてリフレッシュし、運動不足の解消にもなった。
 長崎方式は海外向けの論文でも紹介。他都市の水族館関係者も視察に訪れ、注目されたという。ペンギンが飼育場の外まで行進するイベントは、人気行事として現在まで続いている。

■試行錯誤
 野生の環境に近づけるため餌は腹八分。週に一度は断食日を設けるなど試行錯誤が続く。近親交配を防ぐため、家系図をつくり繁殖状況を把握。個体別の通し番号で管理している。
 3年ほど前からは飼育担当職員の4人全員が人工保育の技術を習得した。体の弱いひなや、育児が難しい親のサポートも力を入れている。田崎館長は「飼育や繁殖ができているのは、大先輩がつくった『長崎方式』からつながっている」と胸を張る。
 今後は血液検査の分析で詳細な健康管理を目指すという。「私たちには、ペンギンを未来に残す責任がある。探究に終わりは無い」
 田崎館長が飼育場に入ると、フンボルトペンギンたちが一斉に駆け寄った。「遊んで」と、くちばしでつつき、鳴き声でアピール。「おいで、おいで」と田崎館長。ペンギンを見つめる瞳は、優しさに満ちていた。

 同館は24日、開館20周年を記念した式典を開催する。新型コロナウイルス感染防止のため、オンラインで配信する予定。

 


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