五月みどりの主演映画「悪女かまきり」主題歌は「少女A」ならぬ「熟女B」 1983年 4月8日 映画「悪女かまきり」が劇場公開された日

五月みどり、歌手として、タレントとして、熟女ブームのはしりとして

五月みどり。本名面高フサ子。1939年10月21日生まれ。1958年「お座敷ロック」でレコードデビュー。1961年「おひまなら来てね」が大ヒット。翌1962年NHK紅白歌合戦に初出場。1963年、1964年と通算3回連続出場。

1967年生まれの私にとって、このあたりの記憶はありません。初めて彼女を認識したのは、クイズダービーの2枠回答者だったと思います。小学生の目には “正解率低めの庶民的なおばさま” と言う感じに見えました。

1980年代になると彼女はセクシー女優として活躍します。1980年『マダム・スキャンダル 10秒死なせて』で 日活ロマンポルノに主演。ロサンゼルスを舞台に、夫 / 義父 / 元恋人と大胆にからむ実業家の女性を演じ、配給収入4億円のヒット。“熟女ブーム” のはしりとなります。

主演映画「悪女かまきり」で流れた、五月みどりが歌う「熟女B」

1983年には3作品が公開。1月に公開された富士映画『丑三つの村』では、田中美佐子、大場久美子らと豊満な肉体で競い合い。そして同年4月8日『悪女かまきり』が東映で公開されます。

本作『悪女かまきり』で彼女が演じるのは美容室オーナー真紗子。不動産会社社長のパトロンに3億円の保険金をかけ、彼女の虜になった保険会社員をそそのかしパトロンを殺害。その彼をも消そうとする… 本作が第1回監督作品となる梶間俊一と『幻魔大戦』内藤誠との共同脚本はアメリカ映画『白いドレスの女』を彷彿させる(?)サスペンスエロス。

その保険会社員との出逢いのシーンで流れるのがご本人歌唱の「熟女B」。

歌い出し「バナナの皮を剥くように~」の挑発的なつかみは、日活ロマンポルノでは先輩・畑中葉子の「後から前から、どうぞ」を想起します。

「少女A」のオマージュ? なかにし礼×中村泰士のアダルトな世界

一方全体的には、「時には娼婦のように」を作詞したなかにし礼先生のアダルトな世界が拡がります。

 あなたの目に犯されて
 あたしは落ちていく
 ラララ~ウウウ~
 燃えやすいとしごろ

 左の乳房に貞操を
 右の乳房に欲望を
 つつんで生きている女

また、タイトルで便乗したと思われる、前年大ヒットした中森明菜「少女A」へのオマージュ(パロディ?)も散見されます。

 特別じゃないどこにもいるわ
 わーたーしー 少女Aー

 あたしだけがすごいんじゃないわ
 あ・た・し 熟女~B~

中村泰士の楽曲は、前年なかにし礼とのコンビで大ヒットした「北酒場」のような軽快なメロディ。

当時テレビ番組で歌う姿を見る機会はあまりなかったものの、今YouTubeで見ることができるお姿は、シングルレコードジャケットのセクシーな衣装とは程遠い、地方のスナックのママさんの普段着のような衣装。軽やかに手を振り微笑みながら歌う姿は手の届く熟女と言った印象を受けます。

ファイナル作品で熟女観音に、そして路線からの卒業

興行的には『マダム・スキャンダル 10秒死なせて』ほどからみシーンがなかったせいか、東映のこの年のトップ5には入りませんでした。ちなみに本作の同時上映は大原麗子主演『セカンド・ラブ』。こちらも中森明菜とは全く関係がありません。

同年12月日活ロマンポルノ『ファイナル・スキャンダル 奥様はお固いのがお好き』(同時上映 早乙女愛主演『女猫』)主演。新春恒例の人気シリーズ “未亡人下宿” をグレードアップさせたコメディポルノ。相手役公募で1,186名の応募者の中から選ばれた東大生を初めとするピチピチ現役大学生を相手に、面倒見の良さと母性本能の強さで熟女観音と慕われる珠子を演じ、本作を最後にこの路線から卒業します。

1985年に20歳年下歌手の立花淳一と3度目の結婚、2年後の1987年に離婚。昭和が終わります。

昭和、平成、令和… 時代を駆け抜けてなお現役の熟女感

1989年(平成元年)に二科展入選。画家、着物のデザイン、ティッシュボックスの製作、伊東家のお母さん、コロッケ親善大使、そして息子の当時の嫁・菊池桃子と共演したミツカン「追いがつおつゆ」のCM等「スーパーマルチなアーティストとして常に第一線にて活躍」(公式サイトより)で平成を駆け抜けます。

令和の今、80歳を過ぎてもまだまだ現役の熟女感。『悪女かまきり リターンズ』で復活してくれないかなぁ。今だと東映よりNetflixあたりの方が企画通りやすいかも… と妄想が膨らみます。そして、その時には併せて「熟女B」の復活も。

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