東京五輪開催に“蟻の一穴” 豪州の飛び込み最終予選「ボイコット」から広がる危機

胸中を語った橋本聖子会長

東京五輪へまたまた難題だ。新型コロナウイルスの感染拡大で「五輪どころではない」との声が強まる中、東京五輪最終予選とテスト大会を兼ねる飛び込みのW杯にオーストラリア連盟が選手団を派遣しないことを発表。その理由について東京都に緊急事態宣言が再発令された状況を踏まえて「派遣が安全でないことが明確となった」としている。

オーストラリア側は五輪本番について「安全な大会になると確信している」との見解を示しているが、関係者にとっては頭が痛いところだ。思い出されるのは昨年3月、コロナ禍を危惧してカナダとオーストラリアは選手団の派遣回避を発表し、その直後に五輪史上初の延期が決まった経緯がある。ある組織委幹部は「IOC(国際オリンピック委員会)が最も恐れているのはスポンサーとアスリートが離れること」と明かした。たとえテスト大会とはいえ「コロナが原因で選手が来ない」という事実は、ボディーブローのようなダメージを与えるわけだ。

開催への不安と焦りは組織委・橋本聖子会長(56)の言動にも表れた。23日の定例会見で記者団から「冷静に考えて本当に開催できると思うか? 全く不安がないとすれば普通じゃない」と厳しい意見をぶつけられると「組織委員会としては中止は考えておりません」と否定しつつも「やはり不安はたくさん私にもあります」「絶対に開催したい思いはあっても、果たして本当にご理解いただけるのか。常に自問自答しております」「国民の皆様、医療関係の皆様の思いに寄り添えば寄り添うほど、悩みは毎日多くなっていきます」と胸の内を吐露した。

のらりくらりと質問をかわしてきた以前とは異なる回答。開幕まで3か月、やはり開催は土俵際まで追い詰められてきたのか。

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