【MLB】ダルビッシュが2戦連続で封じた“世界一の打線” 心技が凝縮された中軸との駆け引き

パドレス・ダルビッシュ有(左)とドジャースのジャスティン・ターナー【写真:AP】

24日のドジャース戦で7回1失点の好投で2勝目を挙げたダルビッシュ

■パドレス 6ー1 ドジャース(日本時間24日・ロサンゼルス)

パドレスのダルビッシュ有投手が2勝目を挙げた23日(日本時間24日)のドジャース戦は、左腕カーショーとの2登板連続の投げ合いが注目を集めた。7回4安打1失点9奪三振の内容で、盟友に借りを返した右腕は「似たような感じだけど、前回の登板とはまた違う攻めをしました」と表情に充実感を漂わせた。「世界一の打線」と警戒した中で、細心の注意を払ったのは3番のジャスティン・ターナー。四球を与えたものの、無安打2三振に封じた3打席を「駆け引きで勝負をするのはすごく楽しい」と振り返った。

17日の前回登板後、「また頭を使ってしっかり抑えたい」と宿敵ドジャース戦へ抱負を語ったダルビッシュは、その言葉通りの頭脳的な投球でまたも1失点で切り抜けた。隙のない打線で細心の注意を払ったのが、3番のターナーだった。あえてその理由を聞くと、明確な答えが返ってきた。

「チームリーダーのターナーが(塁に)出れば、その後もどんどん続いてくる。すごく頭のいい打者ですから、ああやって駆け引きで勝負をするのはすごく楽しいですね」

3打数無安打2三振に封じていた相手とわずか6日後の再対決。マウンドから得た特徴やクセ、そしてデータ的な傾向も十分に咀嚼して臨んだ右腕は、1打席目にストレートの四球を与えたものの、その後の2打席を見逃し三振に仕留めた。

対峙した3打席でもっともスリリングだったのは、最多の9球を費やした6回の第3打席だった。

2戦連続の好投も慢心はない「その上を行けるようにちゃんと努力をしたい」

5球目のスライダーがコールされず、首をかしげたダルビッシュ。この直後からターナーとの頭脳戦に拍車がかかる。カウント3-2から、球速がほぼ同じ140キロ前後のカッターとスライダーを内外角の低めに散らしたが、ターナーは3球連続ファールで凌いだ。

勝負に決着をつけたのは、内角“高め”に投じた約135キロのスライダーだった。この過程をたどると、先の3球は、的を絞っていた球で餌をまく格好となり、裏をかく変化球が決め球になったと捉えることもできる。相手が得意とする危ない球を回避する“消去法”の配球だけで、打率.350を超える好打者は封じられない。ドジャースの専属解説者で、80年代初頭から90年代中頃にかけてド軍のエースに君臨し、59イニング連続無失点の金字塔を打ち立てたオーレル・ハーシュハイザー氏は、この9球を「ダルビッシュが心理戦を制した」と称賛していた。

技術の粋を尽した3番ターナーとの戦いは“知のせめぎあい”でもあった。

2登板連続のドジャース戦で“絶対封じ”を課したジャスティン・ターナーとの勝負を5打数無安打4三振で終えたダルビッシュは、その心境を淡々と表した。

「この2試合たまたまそういうことになったというだけ。向こうもこれからどんどん自分のことを分かってくるでしょうし、厳しくなってくると思う。その上を行けるようにちゃんと努力をしたいと思います」

今季の公式戦で残されたドジャース戦は12試合。粘り強く理想に近接していくダルビッシュと奮起するターナーとの心技の勝負は、これからの楽しみの一つになった。(木崎英夫 / Hideo Kizaki)

© 株式会社Creative2