【新型コロナ】事実上の禁酒令、居酒屋「客は来ない」 神奈川県の酒類提供自粛要請スタート

酒類の提供停止が始まる前日とあって多くの人出でにぎわう仲見世通り=27日午後7時5分ごろ、川崎市川崎区

 新型コロナウイルスの「まん延防止等重点措置」が適用される県内9市で28日、県による「酒類提供の終日停止」要請がスタートする。

 「酒を飲めない居酒屋に客は来ない」「感染拡大は酒のせいなのか」。休業を余儀なくされる飲食店からは悲鳴と不満が噴出し、関連業種にも困惑が広がる。大型連休を直撃する事実上の〝禁酒令〟が、時短営業の苦境にあえぐ繁華街に深刻な打撃を与えそうだ。

◆休業決意の店主「不公平だ」

 「酒を出せないのなら、営業は続けられない」

 JR関内駅近くにある居酒屋の店主は、今月末からの休業を決意した。

 繁華街の大型店のため家賃が高く、県の時短営業協力金では赤字が避けられない。既に午前0時の閉店時間を繰り上げ、来店客は以前の2割ほどに減った。そこに追い打ちを掛ける5月11日までの酒類提供停止要請に、「なぜ我々だけが悪者扱いされるのか。不公平だ」と憤る。

 常連客からは「ノンアルコールビールを飲みに来るよ」という声も掛けられたが、「酒と料理は切り離せない食文化で、料理だけでは満足してもらえない」。店としてもノンアルコール飲料では利益が出ないと明かす。

 店は感染対策に力を入れ、マスク飲食を来店客全員に徹底している。一方で、ショッピングセンターや映画館は営業を続け、昼間の繁華街は多くの人が歩いている。行政の偏った対策に不信は募るばかりだ。「飲食店の休業だけでコロナが収束するような事態は、そもそも緊急事態ではない」

© 株式会社神奈川新聞社