検証・佐世保市政 朝長市長4期目折り返し〈下〉 IR誘致 準備着々 実現に手応え

九州IR推進協議会の発足式に出席した佐世保市の朝長市長(右端)。政財界の代表者が参加し、同市へのIR誘致を目指す方針を確認した=福岡市、ホテルニューオータニ博多

 会場には九州経済連合会会長の麻生泰(74)をはじめ、九州政財界のそうそうたる顔ぶれが並んだ。12日に福岡市内で開かれた「九州IR推進協議会」の発足式。カジノを含む統合型リゾート施設(IR)を佐世保市のハウステンボス(HTB)へ誘致し、地元経済の活性化につなげる共同宣言をした。
 IRを巡っては、福岡、北九州両市の経済界でも誘致を望む声があった。福岡県を含む協議会発足に立ち会った佐世保市長の朝長則男(72)は「九州が一体となる流れだ」。大きな手応えを感じていた。
 2007年から佐世保市政のかじを取る朝長。その功績の一つは、HTBなどを中心とする観光振興と評価する声は少なくない。10年には、経営難に陥ったHTBの救済をエイチ・アイ・エス(HIS)会長の澤田秀雄(70)に直談判し、その後の復活へつないだ。
 新型コロナウイルスの影響で観光産業は苦境にある。HTB敷地に計画するIRは「佐世保の経済を活性化させ、観光地としての地位を一気に高める」とある市議は言う。
 国にIR区域の認定を申請する主体となる県は、朝長や地元経済界の熱意に押されて14年に誘致を表明。県を支える市は、ギャンブル依存症や生活環境の悪化を懸念する近隣住民の理解促進などに奔走する。
 全国では大阪府・市や横浜市、和歌山県が誘致を表明。国はIRに「これまでにないスケール」を要求し、「地方での整備は困難」という見方もあった。
 それでも、HTBにIRを建設・運営する事業者の公募には全国最多の5グループが応募。「観光地としての潜在能力は高い」と評価された。北海道など有力視されたライバルも準備不足で続々と誘致を見送る中、「佐世保はいち早く動いてきた。簡単に差は埋まらない」と朝長はみる。
 国は10月から来年4月まで全国からIR区域の申請を受け付け、最大3カ所を認定。順調に進めば、次期市長選の23年4月までに結果が出るとみられる。
 その市長選を巡っては、地元県議や若手市議が意欲をのぞかせる。5選出馬について、朝長は取材に「まだ判断する時期ではない」と言及を避ける。周囲からは「後継者を育てている様子はなく、まだまだ精力的に働ける」と続投を望む声がある一方、「年齢や多選を考えると難しいのではないか」との観測もある。
 ただ、IR誘致の成否が佐世保のリーダー選びに影響を与えるという見方は大方で一致している。「成功すれば勢いに乗るが、失敗すれば逆風が吹くだろう」=文中敬称略=


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