日本株だけが冴えない…ワクチン遅れで取り残される日本、活路を見出す銘柄は?

決算発表シーズンになりましたが日本株相場は上値が重い展開が続いています。海外株高を好感して朝方高くてもすぐに下げに転じてしまいます。

弱い地合いの象徴は好決算を発表した銘柄が急落することです。これは3月決算に先立つ2月決算銘柄の安川電機の決算ですでに見られた現象でした。


日本株に「安川ショック」の傾向が

安川電機は今期(2022年2月期)の純利益が前期比67%増の317億円になるとの見通しを発表しました。自動車や半導体、電子部品などの需要回復を背景とした主力事業の成長を見込んだもので、文句なしの良好な数字です。しかし、これを受けた翌日の安川電機の株価は大幅安になりました。

同社の純利益の見通し317億円は、アナリスト予想の平均であるQUICKコンセンサス(311億円)を上回ったものの、ほぼ想定内の結果と受けとめられ、利益確定売りに押されて急落となったのです。

3月決算の前哨戦である安川電機の決算で、こうした市場の反応を見せられては、今回の3月決算に臨む投資家は戦々恐々としていました。果たして3月決算の皮切りとなった日本電産も「安川ショック」の再現となりました。

日本電産は今期(2022年3月期)の純利益が前期比15%増の1,400億円になりそうだと発表しました。最高益更新の見通しですが、QUICKコンセンサスは1,531億円。市場の高い期待に届かなかったと翌日の株価は売り気配で始まり大幅安となったのです。

さらにエムスリーも同様の反応でした。2021年3月期は、純利益が75%増の378億円と11年連続の最高益で、QUICKコンセンサスの356億円を上回ったものの株価は大幅安となりました。

日本株“だけ”が冴えない

米国市場では、今週S&P500とナスダック総合が過去最高値を更新しました。グローバルで「リスクオフ」に傾いているわけではなく、日本株の相場がさえないのです。この1カ月のパフォーマンスを海外株と比べると、S&P500は5.4%、欧州株の指標であるストックス600は3.1%の上昇に対してTOPIXはマイナス3.3%です(3/26~4/26まで)。

この株価パフォーマンスの違いは景況感の差です。わかりやすい例を挙げましょう。テレビ東京ニュースモーニングサテライトが番組出演者のアンケートをもとに算出する「モーサテ景気先行指数」があります。直近の数値は、米国53.4、欧州34.1、中国23.9です。それらに対して日本は若干ながらマイナス0.0。けた違いに低いどころかマイナスです。

日本株の上値の重さは、日本の景況感が悪いから、という単純な理由によるものだったのです。

ワクチン接種の遅れで露呈した日本の「後進性」

問題はなぜ欧米に比べて景況感が悪いのかですが、これもシンプルです。コロナの対応が遅れているからに他なりません。

まん延防止等重点措置や緊急事態宣言の休業要請、時短要請と言っても所詮は「お願い」でしかありません。欧米の「ロックダウン」のような厳格な対応と比べればはるかに緩慢な措置です。

また、いくら自粛で人の流れを抑制できたとしても時間稼ぎでしかありません。コロナ克服の鍵はワクチンであるのは明らかですが、日本はワクチン接種率が圧倒的に低く、これが文字通り致命的なディスアドバンテージになっています。

こういう状況では主要国・地域の中で日本の景気の先行き見通しが低いのはもっともであると言えます。

ワクチン接種率の低さが象徴するのはまさに我が国の「後進性」です。ワクチン接種が進まないのは我が国の行政システムが機能不全に陥っていること、時代錯誤であること、決定的にデジタル化が遅れているからです。

いまさら嘆いても取返しがつきませんが、我々にできることは相当の危機感をもってDXを推進していくほかはないでしょう。

見通し暗い日本株でも好調なのは?

決算序盤戦で好業績を示しても急落する銘柄が多いと述べましたが、その中でオービックは例外でした。

オービックが発表した2021年3月期の純利益は8%増の380億円、9期連続で最高益を更新しました。今期の純利益の見通しについては5%増の400億円と発表し、QUICKコンセンサスの422億円に届きませんでした。

このため、これを嫌気した売りが先行、株価は一時6%安まで売られたものの、その後切り返しました。前日比プラスに浮上すると、安値18,730円から20,200円まで1,500円超の値幅での大陽線で引けました。その後も続伸し、下落する日経平均とは逆行する動きとなりました。

オービックと言えばまさにDX化推進の中心的企業です。我が国にとってデジタル化推進は不可逆的なテーマであることから、銘柄選択においてもこれを抜きには語れません。

デジタル関連銘柄はグロース企業が多く、米国の長期金利上昇などで調整を迫れてきましたが、ここにきて長期金利の上昇も一服感があります。デジタル関連銘柄が上昇基調に回帰するタイミングはそう遠くないでしょう。

<文:チーフ・ストラテジスト 広木隆>

© 株式会社マネーフォワード