台湾人ユーチューバーが〝マスク風ペインティング動画〟大炎上でパスポート没収に

インドネシアは東南アジアで最も感染が広がっている(写真はイメージ=ロイター)

【アツいアジアから旬ネタ直送 亜細亜スポーツ】米在住の台湾人ユーチューバーがインドネシアでおバカ動画を撮影し、アップしたことで大ヒンシュクを買った。チャンネル登録者数341万人の人気ユーチューバー、ジョシュ・パーラー・リンが、ロシア人恋人リシャとバリ島に滞在中のことだ。

2人は地元スーパーに入ろうとするが、リシャはノーマスク。インドネシアでは公共の場所でのマスク着用が義務付けられているため、警備員に止められてしまった。そこでジョシュらはいったん駐車場へ戻り、車の中でリシャの顔にマスク風のペインティングを施した。鼻から下を水色に塗り、白い縁取りとヒモを描き、遠目に見たら市販の不織布マスクのようだ。その姿でまたスーパーへ行くと、警備員はマスクなしに気付かず。リシャは体温測定もクリアし店内に入る。2人は笑いをこらえながら買い物かごを手に店内を回り、客の不審そうな視線を楽しみながら撮影を続けていく。

ジョシュはこの手のイタズラ動画でのし上がったユーチューバー。だが今回ばかりはシャレでは済まなかった。この動画を先月16日にアップすると、インドネシアのみならず母国・台湾からも批判が殺到した。

インドネシアは東南アジアで感染者、死者数ともに最多で、デパートなどの営業時間制限や、オフィスの出社人数半減を義務付けるなど、厳しい措置が続いている。そんなさなかだけに、「みんながルールを守ってコロナと戦ってるのに、あまりにもふざけてる」「コロナで家族を失った私の前で同じことしてみろ」などと地元民は怒りマックスに。ジョシュは慌てて動画を削除したが、データ保存していた人々が再度アップすると、一気に拡散し大炎上。ユーチューブだけでなく、ジョシュのインスタグラムやフェイスブックにも抗議の書き込みが相次ぎ、リシャのインスタにも非難が押し寄せた。

ネットメディアの格好のネタとなり、ついにはインドネシア当局も動いた。入国管理局は先月23日、2人を事情聴取し、パスポートを没収。インドネシアでは、ノーマスクで公共の場に出入りすると100万ルピア(約7600円)の罰金が科されるのだが、違反を繰り返したり、悪質行為に及ぶ外国人に対しては国外退去を含む厳しい罰則が定められているのだ。

ジョシュは地元弁護士を雇い、リシャや法律事務所スタッフと謝罪する動画をインスタにアップ。「人々を楽しませることが私の仕事ですが、これほど大ごとになるとは思わなかった。二度としません。コロナ禍が収まったら、バリの観光復興の支援をしたい」と平身低頭だが、この先も動画投稿で食べていけるのか。

☆むろはし・ひろかず 1974年生まれ。週刊文春記者を経てタイ・バンコクに10年居住。現地日本語情報誌でデスクを務め、2014年に東京へ拠点を移したアジア専門ライター。最新著書は「ルポ新大久保 移民最前線都市を歩く」(辰巳出版)。

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