【 2 】新聞1部140円 読む?読まない? 会社員 ケンタさん(32)、ユウサクさん(24)の場合 

「若者の新聞離れ」が言われて久しい。興味の多様化や情報機器の発達、ライフスタイルの変容で、マスメディアに求められる形や内容も様変わりした。これまで長崎新聞は、若者たちの声や要望をどれだけ聞いてきただろうか。「シンブンってものが、ありまして」―。記者が県内のさまざまな若者たちを訪ね、新聞との接点を探った。

朝刊1部を手に「これ、いくらと思う」と聞くと、ケンタ(32)=仮名=は「360円くらい」、ユウサク(24)=同=は「200…」と答えた。正解は140円。「意外と安い」という表情を浮かべた2人。ともに大学まで県内で過ごし、今は佐世保市内の金融機関に勤める先輩、後輩だ。

 

仕事に育児にバタバタ 「空き時間はスマホ」


新聞について詳しく尋ねると、妻子持ちのケンタは「経済新聞を取ってるけど1㍉も読まずに捨てちゃうことも」とばつが悪そう。「仕事相手に『きょう新聞に載っとったね』と話題を振られて、自分は知らないというのも結構あって」。そう続けた上で「育児とかで朝からバタバタで時間がなくて。でも空いたときといえばスマホをいじって」と苦笑いを浮かべた。

一方、独身で社会人3年目のユウサク。記者の予想はいい意味で裏切られた。小学校時代から、食卓の新聞に目を通していたという。「なぜだか、お悔やみ欄をよく見ていた」。大学生の1人暮らしでも定期購読。「ずっと読んでいたから、流れで」。先日も「これ、仕事で使えそう」とがんの生存率に関する記事を写真でスマホに保存した。隣のケンタは「新たな一面…。読んでなさそうなのに」。

 

新聞「かっこ悪い」わけじゃないけど


新聞を読む行為は20~30代にどう映るのだろうか。場所は喫茶店。「例えば、ここで新聞を読んでいる人を見たら、どう感じる」と聞くと、2人は「すごい」と口をそろえた。読むこと自体には「かっこ悪さ」の抵抗はない。新聞に対する「習慣がない」とケンタ。習慣があるユウサクも新聞紙のサイズは「少し大きいかな」と注文を付けた。

これから職場で、さらに主力となる2人。ケンタは日々、朝刊を隅々まで確認する上司を見る。「世間を知って話の幅を広げていくためにも」読んだ方がいいという思いはある。「自分も意識的に時間をつくっていければ…」と言ったので「これを機に、興味があるところからでも、ぜひ」と伝えて1部を手渡した。

「今度からは記者さんの名前も探しながら読みますね」と初対面のユウサクは言ってくれた。新たな習慣と継続。同じ若者、そして記者として、少しの高揚感と課題を胸にして別れた。

 

=文中敬称略=

記者:石田慶介(33歳)

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