長崎県内自治体「成人式見直し」 若者ら翻弄、困惑… それでも周囲に感謝 未来見据える

事前収録に臨む加藤さん(前列右から2人目)ら実行委メンバー=諫早市役所(市提供)

 新型コロナウイルスの感染再拡大に伴い、1月から延期していた成人式も中止やオンライン開催への変更など、長崎県内の多くの自治体が見直しを余儀なくされた。帰省しやすい5月の大型連休に合わせて開く予定だった諫早市も一堂に会しての式典を断念。動画配信に切り替え、「誓いのことば」を述べる新成人代表ら実行委メンバーが事前収録に臨んだ。「集まることはできなくても、気持ちはつながっている。大変な時だが、困難を乗り越えよう」-。コロナ禍に翻弄(ほんろう)され、時に困惑し、立ち止まりながらも、若者たちはこれまで支え育ててくれた周囲に感謝し、未来を見据える。
 4月29日、同市役所。新成人でつくる実行委の8人が、緊張した表情でカメラの前に並んだ。「(式出席者に)楽しんでもらえるよう試行錯誤した8カ月でした」。あいさつした実行委員長の加藤輝さんは万感の思いで振り返った。
 加藤さんは同市職員。県立諫早高時代からイベントの企画が好きで、昨年9月に発足した実行委で委員長を決める際にも自ら手を挙げた。
 一生に一度の成人式。感染防止策はもちろん、どうしたら出席者に喜んでもらえるか、メンバー全員でアイデアを出し合った。その一つが写真共有アプリ「インスタグラム」への公式アカウントの開設。新成人たちの思い出の写真を会場でスライドショーにして流すことにし、インスタを通じて募集するなどした。1月に予定していた式が延期になったときも「準備期間ができた」と前向きに捉えた。重ねた会合は12回。長い時は約2時間半に及んだ。
 4月22日、職場の電話が鳴った。「式は中止し、動画配信する形に決まった」。担当する生涯学習課からの連絡だった。覚悟はしていたが、「動揺し、力が抜けた」。翌日、集まれるメンバーで今後の対応を話し合った。誰ともなく言った。「残念だけど、(動画配信へ)頑張るしかない」。気持ちを切り替えた。
 コロナ禍で気付かされたことがある。それは人との会話、コミュニケーションの大切さ。そして、何げない日常がいかに幸せか、ということ。「県外から帰省できない」「オンライン授業になって大学に行けない。友だちと会えない」。そんな孤独感、不安感を何人もの友人から聞いた。だから、仕事でもプライベートでも、相手への感謝の言葉、ちょっとした声掛けを大事にするようになった。コロナ禍で芽生えた心の変化だった。
 収録動画は市長祝辞や「誓いのことば」、「思い出のスライドショー」など四つに編集し、5月3日午後2時半から市公式ユーチューブで配信。当面、視聴できるようにする予定だ。
 「動画を見て、一人一人に成人式を迎えた意味を感じてもらえればうれしい。そしてコロナ禍に打ちひしがれ、悲観するのではなく、今の状況を乗り越えるために大人として自分がどう動くのか、何ができるか考えてほしい」。自身は、市民に寄り添い、信頼される職員になること、そしてちょっとした気遣い、心配りができる成人になること。理想の大人像を目指し、歩を進めたいと思っている。

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