V長崎・松田新監督 早速手腕を発揮 「同じ絵を描き、個を生かす」

9日の初戦を勝利で飾った松田監督(中央)。好采配で劇的勝利を手繰り寄せた=北九州市、ミクニワールドスタジアム北九州

 サッカーJ2のV・ファーレン長崎が、監督交代後の初陣となった9日の第13節北九州戦を勝利で飾った。手堅く試合を進め、勝負どころでギアを上げて接戦を制した。「同じ絵を描きながら、個を生かす」。新たに就任した松田浩監督(60)が現在12位からの大逆転昇格に向けて、早速手腕を発揮している。
 アウェーで行われた北九州戦。スコアレスのまま迎えた後半45分に、新指揮官は残りの交代カードを迷わず使い切った。2人を投入し、さらにポジション変更も指示。攻撃能力が高い右サイドバックの毎熊を1列前に配置し、米田を右から左へ移した。「引き分けではなく勝ちにいこう」。明確なメッセージ性があった。
 その2分後に決勝点が生まれる。右サイドで毎熊が抜けだし、左から走り込んだ米田がクロスに合わせた。ニアサイドでおとりになった玉田の働きも見事。米田も玉田も後半途中からピッチに送り出された選手で、采配がずばり的中した。
 V長崎のアカデミーダイレクターを務めていた松田氏が緊急登板を打診されたのは、2日の第11節水戸戦に敗れた後。急な話だったため、5日の第12節秋田戦は登録が間に合わず、9日の第13節北九州戦から正式に指揮を執っている。
 掲げるのは、攻守において意思統一の取れたサッカー。ただ「選手の個性を奪い取ってまでやろうとは思わない」と、個性派ぞろいのチーム事情もしっかりと頭に入れている。組織的に守り、攻撃は狙いをすっきりさせた上で思い切りよくプレーしてもらうことが、限られた時間でチームを再建するための最善策-。長年の経験から、そう導き出したのだろう。
 冒頭の北九州戦は3バックで組み立てる相手に苦戦もしたが、ハーフタイムに的確な指示で修正。後半は危ない場面がほとんどなく、いきなりチームに今季初の無失点勝利をもたらした。試合前に「勝負にこだわり、結果にとらわれない」と説いて選手たちを送り出したそうで、献身的にプレーした都倉は試合後のSNSで「言葉がマジで刺さった」と打ち明けている。2013年の栃木以来、8年ぶりにJクラブを率いる新指揮官は、ハード、ソフト両面のきめ細やかな采配でクラブ内に健全な空気を生んでいる。

北九州戦で先発に抜てきされたV長崎の都倉(左)。体の強さを生かして攻撃の起点になった=ミクスタ

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