ソフトバンク苦戦の原因はどこに? データで分析、打線と救援陣は昨季以上も…

ソフトバンク・栗原陵矢、柳田悠岐、今宮健太(左から)【写真:藤浦一都】

40試合を消化して18勝16敗6分の貯金2で3位につけるソフトバンク

2年連続のリーグ優勝、5年連続の日本一を目指す王者ソフトバンクが苦しんでいる。12日のロッテ戦に引き分け、このカード1分1敗に。これで4月23日~25日のロッテ3連戦から6カード連続で勝ち越しがなく、この間は5勝8敗3分と3つの負け越し。今季はここまで40試合を戦って、18勝16敗6分けの貯金2で、首位の楽天と1.5ゲームの3位となっている。

12日のロッテ戦では打線が10安打8得点を奪ったにも関わらず、投手陣が8失点。先制するも逆転され、再逆転後にモイネロが追いつかれるというショックの大きい引き分け方だった。この試合に象徴されるように、投打の歯車が噛み合わない、波に乗り切れない戦いがここまでは続いている。

もともと近年のソフトバンクはスロースターターではある。怪我人やコンディションが整わず、なかなか戦力が揃わないまま序盤の戦いを強いられるケースが多い。最終的には貯金を31個作ってリーグ優勝を果たした昨季でさえ、40試合を終えた段階では22勝17敗1分の貯金5。中盤までにチームとしての戦い方、勝ち方を確立し、夏場から終盤戦にかけて白星を積み重ねていくのがスタイルと言える。

チームの打撃成績はここまで昨季以上の数字が残っている

それでも、ここまでの戦い方にファンは不安を覚えるだろう。そこで、現在のチーム状況をセイバーメトリクスの指標などでデータ分析を行う株式会社DELTAのデータを用いて分析。昨季の数字と比較し、解消すべき課題がどこにあるのか見てみたい。まずは打撃成績だ。

・チーム打撃指標
2020 打率.249 出塁率.321 OPS.722 wRC+103
2021 打率.264 出塁率.331 OPS.731 wRC+112

チーム全体の打撃成績を見ると、決して悪い数字ではない。チームの打率、出塁率は12球団でトップの数字を残しており、昨季を上回っている。チーム得点数166もロッテに次ぐリーグ2位。打線の繋がりを欠くなどはあるものの、打線に関しては昨季とさほど変わらないか、それよりもいい成績がここまでは出ている。

打線とは対照的なのが投手陣。特に先発投手だ。投手陣全体の指標を見ると、大幅に数字が落ちているわけではない。昨季と比べると、わずかに悪化しているものの、先発とリリーフに分けて見ると、先発陣がこれに大きく関係していることが分かる。

ソフトバンク・千賀滉大(左)と東浜巨【写真:福谷佑介】

昨季と比べて大幅に悪化している先発投手陣の成績

・チーム投手指標
2020年(先発)57勝28敗 防3.11 K%23.0 K-BB%13.3
2021年(先発)9勝14敗 防4.19 K%17.8 K-BB%9.1

2020年(リリーフ)16勝14敗 防2.60 K%23.7 K-BB%12.4
2021年(リリーフ)9勝2敗 防2.33 K%26.8 K-BB%13.1

昨季は1年間で29個もの貯金を作ったソフトバンクの先発陣だが、ここまでは9勝14敗と5つの負け越しに。防御率も1点以上も悪化しており、奪三振率を表すK%も大幅に低下している。エースの千賀を怪我で欠き、東浜も出遅れ。ムーアもメジャー復帰で流出した。新加入のマルティネスはここまで好投を見せているものの、特に千賀、東浜を欠いていることが大きく響いている。

一方のリリーフ陣が昨季も鉄壁ぶりを見せていたが、今季はここまで昨季を上回るほどの数字を残している。リリーフ陣だけで7つの貯金を作っており、防御率も昨季を上回る。K%も上昇しており、その鉄壁ぶりは今季も健在と言える。泉圭輔や津森宥紀ら若い投手たちの成長も目覚ましく、チームにとってリリーフ陣は“心臓”だ。

こうなると真っ先に立て直すべきは先発投手陣だと言える。千賀は右足首の怪我のため長期離脱となっているが、東浜の復帰は近い。新助っ人のレイも今週末には実戦で登板する予定となっている。先発投手陣をしっかりと整備することが必要だ。

千賀や東浜、デスパイネ、グラシアルらを欠く苦しい台所事情

現在、ソフトバンクは苦しい台所事情での戦いを強いられている。先にも記したが、先発では千賀と東浜が不在。森も故障のため離脱している。助っ人のデスパイネも下半身のコンディション不良でファーム調整中で、グラシアルも右手指の怪我で登録抹消となった。ベテラン捕手の高谷も膝の怪我のためにファームで調整中だ。

両エースに守護神、打線の中核を担うべき助っ人2人を欠く状況は“飛車角落ち”どころか“飛車角金銀落ち”ほどの苦況と言える。さらには、グラシアル離脱のタイミングと重なるように、ここに来て主砲の柳田やチーム打点王の栗原、ベテランの松田らの状態が揃って下降気味となっていた。

この先、東浜の復帰、レイの1軍昇格(実力は未知数ではあるものの……)による先発投手陣の整備、デスパイネやグラシアルの復帰、そして柳田や栗原らの復調がなされれば、上昇の余地は十分。王者ソフトバンクがこのまま沈んでいくとは、なかなか考えづらいだろう。(Full-Count編集部)

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