長崎県、感染「ステージ5」に 全域に医療危機事態宣言

県内の感染状況

 長崎市を中心に新型コロナウイルスの感染拡大が収まらず県内の医療提供体制が逼迫(ひっぱく)しているとして、中村法道知事は13日の臨時記者会見で、県内の感染の広がりを5段階で示す独自のステージを4(特定圏域などでの急増)から最も高い5(県下全域での急増)に同日引き上げたと発表した。さらに県内全域に「医療危機事態宣言」を発令し、緊急時対応として新たに専用病床を67床確保。最大確保病床を421床から488床に拡充した。ステージ5は初めて。長崎市への緊急事態宣言は継続する。
 同市内でコロナ治療に当たっている各医療機関では病床や医療スタッフをコロナ患者に回すことで、がん治療や救急医療など一般診療を十分提供できない状態に陥っている。会見に同席した中田勝己県福祉保健部長は「これ以上専用病床を確保するのは困難。ぎりぎりの状況」と述べた。

ステージ引き上げについて説明する中村知事=県庁

 県内では11日までの1週間で340人が感染。うち長崎市は6割の205人を占める。感染経路が分からないケースも増え、市中感染が起きているという。
 同市を中心とする長崎医療圏の専用病床140床は11日時点で、98.6%の138床が埋まった。ただ患者38人を他の医療圏の病院に回しており、実際は100%を超えている。県全体の病床使用率も62%まで上昇した。
 県は入院患者のさらなる増加を見据え、緊急時対応として県内全域の最大確保病床を67床拡充。12日に長崎医療圏の36床を含む県本土計59床を確保し、残りの離島の計8床は感染拡大時に使用する。長崎医療圏から他の医療圏や後方支援病院への転院も進めるほか、今後入院が望ましい患者を宿泊療養施設に入所させる可能性もあるとして、同施設で訪問診療や点滴治療、酸素投与などができる体制も整える。
 またステージ5では県内全域に独自の緊急事態宣言を発令し、飲食店などに営業時間短縮などを要請できるが、知事は「長崎市以外の地域は、市民生活や経済活動に過度の制約を加える感染状況にはない」として見送ったという。ただ同市以外の直近1週間の感染者も前週から倍増し135人。知事は外出や人と人との接触機会を極力減らすなど感染防止対策の徹底を呼び掛けた。


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