<金口木舌>電話が鳴り響く前に

 電話にはやきもきさせられる。10日夕、環境省の那覇市にある事務所から、国際自然保護連合による勧告内容を伝える電話が国頭村長室にあった

▼世界自然遺産に登録か。報道陣が固唾(かたず)をのんで見守る中、すぐに電話を取った知花靖村長。「登録記載です」と電話の内容を報告すると、職員らはカチャーシーで喜びを分かち合った

▼つながりにくい電話もある。6日に65歳以上の高齢者を対象にした、新型コロナウイルスワクチン集団接種の受け付けを開始した名護市は専用回線がパンク状態。「つながらない」と憤る市民が役所に押し寄せた

▼公平性を担保するために各市町村は予約を先着順にしているが、規模の大きな自治体になるほど殺到する予約希望に対し、人手が不足しがち。予約システムも不具合を起こすなどトラブルが相次ぐ

▼予見された事態だったはずだが、政府に次善策はないのか。ボランティアで医療従事者を募る東京五輪とは対照的に、各市町村のワクチン接種の人材確保は自治体に丸投げ。7月中に高齢者の接種を終えるよう号令を掛けたのも五輪開催に支持を得ようという思惑が透ける

▼人流を抑えながら、9万人以下の関係者が来日するイベントを開催するニッポン。五輪を機に感染拡大し、死者が増えることがあってはならない。訃報を知らせる電話が全国で鳴り響いてから後悔しても遅い。

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