【インタビュー】長崎大学病院・高山隼人氏 「体調変化の早期把握が重要」

ビデオ会議システム「Zoom(ズーム)」で取材に応じる高山副センター長

 新型コロナウイルス集団感染が発生したクルーズ船コスタ・アトランチカが長崎港を離れて間もなく1年。船員への医療支援を調整、指揮した長崎大学病院地域医療支援センターの高山隼人副センター長(59)は、学校や会社の寮などが船内と近い環境にあるとし「日々の健康チェックと体調変化の早期把握が重要」と呼び掛ける。第4波の特徴や災害時のリスクについても聞いた。

 -クルーズ船内と似た環境にある場所は。
 大勢で同じように生活し接触機会があるという意味では、学校や会社の寮などが似ている。その中に陽性者が混じると感染を防ぐのは難しい。3密(密閉、密集、密接)の回避など、感染を持ち込まないようにしないといけない。クラスター(感染者集団)はいつでも起こり得る。

 -学校や寮で感染者が出た場合、拡大を食い止めるにはどうするべきか。
 コスタでは全ての船員に毎日健康チェックをしてもらうことで、疑わしい人を速やかに医療チームにつなげられた。学校などでも日々の健康観察に力を入れ、「熱がある」「のどが痛い」といった症状を早めに拾い上げた方がいい。

 -第4波の特徴は。
 第3波までと違い、家庭や職場で感染が広がりやすく、若者も重症化する傾向がみられた。治療期間が長くなり、病床が占有され、医療体制は逼迫(ひっぱく)した。

 -感染者が急増した大型連休前後、病院内の状況は。
 多くの医療者が頑張っていた。特に困ったのは夜間帯。入院者を受け入れるため、帰宅した十数人が呼び出されたり、ずっと帰れなかったりした。内科系だけでなく、外科など他の診療科に手伝ってもらい切り抜けてきた。保健所や自治体、消防も努力している。

 -ここ数日、県内の感染者数は1桁が続いた。
 インド株が国内で広がり始めた。今は皆さんが注意して県外との行き来を減らしているが、全国的な往来が出始めると第4波になるときと同じようになりかねない。

 -災害派遣医療チーム(DMAT)の統括役も担っている。
 DMATはクラスターが発生した医療機関や高齢者施設に入り、機能の回復、維持に努めている。既に県内6、7カ所に入った。応急処置やマネジメント(事務代行など)、職員への指導などを担う。早期に介入して施設内の感染拡大を断ち切り、地域医療の逼迫を防ぐのが役割。感染症に詳しい医療者も帯同している。

 -例年より早く梅雨入りした。感染対応と災害対応が重なるかもしれない。
 病床が不足している分、コロナ患者と被災者、両方のバランスを取るのは従来より難しい状態だ。被災者の中に陽性者がいる可能性もある。病院は受け入れる前に適切な評価をしなければならず、そうなると治療するまでに時間が掛かってしまう。

 -避難所で感染しないかという懸念も聞かれる。
 自宅療養者や濃厚接触者を一般の避難者と違う場所に誘導するよう、行政は準備する必要がある。災害時は、避難所にこだわらず、安全な場所に住む知人宅や宿泊施設へ行くのもいい。


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