日本セルフケア推進協議会が厚労省に要望書提出/「国民に分かりやすいセルフケアの情報発信を」

【2021.08.02配信】日本セルフケア推進協議会(三輪芳弘代表理事=写真左)は、セルフケア推進に関する要望書を厚労省に提出した。厚生労働省大臣官房長 大島一博氏(写真右)、政策統括官 伊原和人氏、医政局長 迫井正深氏に手交 した。

「セルフケアに関する要望」を手渡した。

要望書では、まず厚労省医政局に「セルフケア・セルフメディケーション推進室」が設置されたことを歓迎。
その上で、セルフケアおよびセルフメディケーション等の推進が生活者の利益・便益に資する形で着実に実現されていくためには、セルフメディケーション等を進める前提としてセルフケアの推進(健康に関する関心・正しい理解、予防・健康づくりの推進等)が重要であるとの前提に立ち、いくつかの事項を要望した。

1つ目に、生活者の新たな日常の柱の一つとして、感染症対策も含めたセルフケア(健康に関する関心・正しい理解、予防・健康づくり)の定義の後押しを要望した。
特にCOVID-19によって生活者を取り巻く環境が大きく変化する中で、格段に重要性が増しているとした。
具体的には新たな習慣となったマスクの着用、手指消毒、3密回避などのセルフケアは季節性インフルエンザなど感染性疾患患者が大幅に減少した要因の一つとして考えられ、約1480億円の医療費削減効果があったと指摘した。
COVID-19重症化リスクである基礎疾患(COPD、慢性腎臓病、糖尿病、高血圧、心血管疾患、肥満)については、その予防にはセルフケアの視点を欠かすことはできないとした。
コロナ禍が過ぎたあとも感染症に対するセルフケアの定着を後押しすることで、生活者の健康を守り、また次にいつ襲い来るかもしれない新たな感染症への備えを万全にすべきと考えるとした。

2つ目の要望事項が、「生活者におけるセルフケアの推進がセルフメディケーション等を適切に行う前提であり、まずはセルフケアについて議論を深めるべき」ということ。
セルフメディケーション等の推進には、生活者が症状を自覚し、症状や状況に応じた適切な行動をとることができる安心・安全が確保された環境づくりが必要と訴えた。
そのためには、セルフケアが生活者に広く受け入れられている必要があり、セルフメディケーション等と真に生活者の利益・便益に資する形で推進する観点からも、セルフメディケーション推進に先立ち、日本におけるセルフケアを具現化する議論・検討が深まり、政策に組み込まれる必要があるとした。

3つ目に「生活者がセルフケア及びセルフメディケーション等を正しく理解するための情報発信」を挙げた。
セルフメディケーション等について、単に病院にかからず自分で一般用医薬品を購入して使用することなどと誤った理解が生活者に広がると、かえって重症化の懸念が増すことにもなると指摘。
まずは自分の健康に関する関心を持ち、自分の健康を正しく理解し、その上で予防・健康づくりを考え、さらには、症状の自覚があれば症状に応じて生活者が適切に行動する必要があるとした。
その際には、かかりつけ医やかかりつけ薬局・薬剤師、健康サポート薬局等への日頃からの健康相談と適切な情報提供および助言を受ける必要があるとしている。

「つまり、セルフメディケーション等を推進する前提には、セルフケアの実践が不可欠です。そうしたことを生活者に広く理解が深まるような、生活者にとって分かりやすい情報発信を求めます」とした。

三輪代表理事は要望書提出にあたり、次のようにコメントしている。
“生活者が自身の健康に関心を持ち、医師や薬剤師など医療専門職の伴走や革新的なデジタル技術による支援を受けながら健康に対する正しい理解を深め、疾病の発症予防・重症化予防に留まらない多面的な健康づくりを目指した具体的な行動を習慣化することがセルフケアの本質です。これは、運動、睡眠、食事やセルフメディケーションなどあらゆる健康を目指す取り組みの前提となる概念であるのと同時に、それらすべてを含む大きな考え方です。
厚生労働省医政局に新たに設置された「セルフケア・セルフメディケーション推進室」を中心に、わが国におけるセルフケアの在り方について議論がなされ、力強く政策が推し進められることを期待しております。もちろん、我々、一般社団法人日本セルフケア推進協議会としてもその議論に積極的に参加し、生活者や政府、医療界、産業界など幅広い方々と共に進むべき道を考えて参りたいと考えております。
この度の「セルフケア推進に関する要望」が、医療に加え、日常生活や社会活動など幅広い分野の方々が参加する、真に横串を刺した議論が巻き起こる契機になることを期待しております。”

なお、参考資料として、セルフケアとセルフメディケーション等の関係を下のように図説している。

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