横浜・港北の歩道に高さ3メートルの擬木「何のため?」 意外な答えが返ってきた

歩道上に立つ擬木のオブジェ=横浜市港北区

 「自宅近くのショッピングセンター脇に大きな切り株らしき擬木がある。住んで24年になるが何のためにあるのか、謎のままです」。横浜市港北区の男性公務員(54)から「追う! マイ・カナガワ」取材班に情報が寄せられた。

 同区は記者が学生時代に暮らした街。懐かしい風景に思いをはせながら現地へ向かった。
     
◆気に留めることなく

 綱島街道と県道荏田綱島線の交差点近く。以前は旧松下通信工業の大規模工場が立っていたが、今は2018年にオープンしたショッピングセンター「アピタテラス横浜綱島」がそびえ立つ。都心へのアクセスも優れ、近年はマンションも増えた。

 十数年前とは景色が変わって探すのに少し苦労したものの、ショッピングセンターをほぼ1周したところで、巨大な「擬木のオブジェ」を発見した。

 高さは約3メートルで直径80センチほど。切り株が伸びたような樹木のオブジェだ。

 新施設を建てた際、大木を伐採せざるを得なくなり、その名残を形にとどめるために作ったのだろうか…。

 歩道の真ん中で不思議な光景だが、人々は気に留めることもなく脇を通り過ぎていく。

 買い物に来た女性に尋ねると「ショッピングセンターが開業してからできたのでは」。近くの宝くじ売り場の女性店員に聞くと「3年前から働いているけどずっとありますね」と言う。その正体については、2人とも首をかしげた。
     
◆「街守る重要施設」

 このオブジェはいったい何なのか? 道路を管理する港北土木事務所に聞くと意外な答えが返ってきた。

 「自然災害から街を守る重要な施設で、下水道の空気を抜いているんです」。豪雨などで下水道に大量の空気が入ると、圧力でマンホールのふたが外れたり周辺道路にひびが入ることがあるため、空気を抜く必要がある。その役割を担う「エアー抜き」と呼ばれる施設だという。

 擬木のデザインは周囲の風景との調和を図るために考えられたようだ。設置時期の記録がないというが、1980年代後半からあった可能性が高いとのこと。市環境創造局によると、「エアー抜き」は下水道整備に合わせて昭和期から必要に応じて設置され、2016年度現在で市内に153カ所存在する。

 高さなど形状はさまざまで、適切に空気を逃がすことや下水の逆流防止などを踏まえて設計している。通常は目立たない場所に設置し、シンプルな鉄製のデザインが多いそうだ。「ゲリラ豪雨」が増えたこともあり、磯子区などでは増設も検討中という。どんなデザインが採用されるか楽しみだ。

 取材を進める間に、投稿者の男性から「近所でもう1本見つけました」と追加情報が届いた。市によると、擬木タイプは港北区の2本のほか、鶴見区にも2本あるという。皆さんも探してみては?

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