【コロナ自宅療養】薬局の対応で講演会/服薬指導は電話で/薬は“置き配”

【2021.08.30配信】厚生労働省は8月30日、コロナの自宅療養者への薬局対応について講演会を行った。8月11日〜27日まで297件に対応した関東の薬局グループが講演した。基本的に薬は“置き配”とし、服薬指導は追って電話でしているという。そのほか、患者に迅速に薬を届けるために処方医と使用薬に関してあらかじめ決めておくことや、場合によって近隣の他社薬局と連携し薬を譲り合う関係性が必要と指摘した。

迅速な薬の調達に薬局同士の連携が必要

国内のコロナ患者数は減少に転じたとの指摘があるが、重症患者の発生ピークは患者数ピークから遅れてくるため、厚労省がこの時期に講演会を開いたのには地域ごとに連携して体制を組むことに資するためとの狙いがあるだろう。

講演した薬局グループは、8月11日〜27日までに297件に対応。もともと薬局が何かできることはないか、との考えからコロナ自宅療養患者への対応を始めたという。

仕組みはシンプルで医師から処方箋をファクスで受け付けたら指示の下、患者宅へ薬を届ける。
薬は玄関のインターホン近くに置いていくなどの“置き配”で、患者にはドアから出て薬局関係者を出迎えないよう、事前に伝えているという。
それでも、マンションのオートロックなどでインターホンを一度鳴らさないといけない場合などは、ドアから患者や家族が出てきてしまうことがあり、ひやりとすることがあるという。
基本的にはフェイスシールドとマスクで訪問しているという。

“置き配”は事務員などが行うことも多く、完了後に薬局の薬剤師に電話を入れ、薬局で待機していた薬剤師から患者へ服薬指導の電話をするという。

課題としては、患者に迅速に医薬品を届けるために処方医とあらかじめ使用薬を決定しておくとよいと提案した。
また、医薬品の流通が非常に重要として、現在は自社の店舗同士の融通で対応はしているが、今後は他の薬局で在庫している医薬品が確認できたりすると、迅速な調達につながるのではないかと提案していた。さらに、地域の他社薬局を紹介することも出てくるのではないかと呼びかけていた。

講演会では薬局だけでなく訪問診療と、訪問看護の現場からの講演もあった。
訪問診療の現場からは、「災害対応だと思っている」という言葉が聞かれるほど、対応している現場が逼迫している状況が伝わった。中等症以上の患者で「基礎疾患はない」という申告のある患者も採血を行うと糖尿病領域の値であることがわかるなど、オンライン診療だけではできないこともあるという。かかりつけを持っていればよいが、比較的若くかかりつけも持っていなかったり健診も受けていなかったりする人の場合は基礎疾患によって処方薬にも注意が必要だと指摘していた。
訪問看護の現場からは、身体的な変化だけでなく、親を介護していた子供が中等症以上になってしまい親の介護が途絶えてしまったり、独居の人を見守ってくれていた人もコロナになってしまったことで急に見守りの状況が途絶えてしまったりなど、環境の変化にも目を向ける必要があると指摘していた。その場合、行政から食料などは届くがそれを自分で用意できない人の場合には、最低限の食事をどう確保するのかなどの対応が必要になっているという。

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<編集部コメント>
8月29日に開かれた日本コミュニティファーマシー協会フォーラム終了後の会見でも、協会理事からは急ピッチでコロナ自宅療養患者への薬局対応について、各地域で仕組みが組まれ始めているという話が出ていた。現状でもワクチン接種への協力などで逼迫している薬局現場ではあるが、だからこそ、広く負担を分け合えるような仕組みを期待したい。

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