カージナルスの名バッテリー 史上4組目となる「300」の大台到達へ

逆転でのワイルドカード獲得を目指すカージナルスは日本時間9月4日から首位ブリュワーズとの3連戦がスタートし、その初戦に8月の月間MVPを受賞した40歳のアダム・ウェインライトが先発する。女房役は39歳のヤディアー・モリーナが務めるとみられるが、カージナルスが誇る名バッテリーはこの試合で「先発バッテリー通算300試合目」という史上4組目の大台に到達する。モリーナはすでに来季も現役を続行することが決まっており、ウェインライトが現役続行を決断すれば、来季中にメジャー新記録樹立の可能性がある。

ウェインライトとモリーナは今季の25試合を含め、これまで通算299試合で先発バッテリーを組んできた(ポストシーズンの14試合は含まない)。これはミッキー・ロリッチとビル・フリーハンの324試合、ウォーレン・スパーンとデル・クランドールの316試合、レッド・フェイバーとレイ・シャークの306試合に次ぐ史上4番目の大記録である。ウェインライトの今季の登板は先発ローテーション通りにいけば残り6試合のため、フェイバーとシャークの306試合に並び、さらにそのうえを目指すのは来季に持ち越しとなるだろう。

300試合で先発バッテリーを組むためには、お互いが最低でも10年近く同じチームでプレーし、投手はその期間中しっかり先発ローテーションを守り、捕手も正捕手(ないしはその投手の専属捕手)という地位をキープする必要がある。モリーナは2004年、ウェインライトは2005年にメジャーデビューしてからカージナルス一筋で15年以上にわたってプレーを続け、モリーナは現在に至るまで正捕手に君臨してきた。ウェインライトは2007年から先発ローテーションに入り、2011年にトミー・ジョン手術、2015年にアキレス腱断裂、2018年に右肘の故障による長期離脱があったものの、息の長い活躍を続けてきた。昨季が新型コロナウイルスの影響による短縮シーズンとなっていなければ、もっと早く「300」の大台に到達できた可能性もあるが、いずれにしても、この名バッテリーはいよいよ「300」の大台到達を迎える。

マイク・シルト監督は「私にとって本当に驚くべき数字だよ。2人が息の長い選手であることを物語っているよね。長く活躍してきた証であり、1つのチームのためにプレーし続けてきた証でもある。本当に驚くべき快挙だと思う」と語り、自軍が誇る名バッテリーを称賛。投手と捕手のどちらか一方だけが優秀でも、この記録は成立しない。一流の投手と一流の捕手が同じチームでプレーし続けることで初めて成立するというところにこの記録の偉大さがあると言えよう。

2017年に「自分のキャリアを振り返ったときに最も興奮し、最も誇りに思うことの1つはヤディアー・モリーナを相手に投げ続けてきたことだ」と語ったことがあるウェインライトは、この大記録について尋ねられると顔を赤らめ、はぐらかそうとする。一方のモリーナは先日、「僕は1人の人間として、この男を愛している。彼は素晴らしいチームメイトであり、素晴らしい人間だ」とストレートに自身の思いを口にした。好対照な2人だが、だからこそピッタリと息が合い、長年にわたって良好な関係を築くことができたのかもしれない。

現役のバッテリーでウェインライトとモリーナの299試合に次ぐのは、カルロス・マルティネスとモリーナの121試合。しかし、マルティネスは今季限りでカージナルスを去る可能性が高く、これ以上数字を伸ばすのは難しそうだ。その次はレッドソックスのエドゥアルド・ロドリゲスとクリスチャン・バスケスによる104試合だが、ウェインライトとモリーナの半分にも満たない。ウェインライトは先日、「300という数字はかっこいいよね。もう2度と達成されないんじゃないかな」と語っていたが、その言葉通りにウェインライトとモリーナの2人が最後の達成コンビとなる可能性は十二分にあるだろう。

来季も現役を続行することが決まったモリーナは、ウェインライトに対するリクルート活動を続けているという。「家族に相談してから」と慎重な姿勢を見せるウェインライトだが、もしウェインライトがもう1年プレーしてモリーナとともに引退することを選択するのであれば、この2人はロリッチとフリーハンのメジャー記録を破り、不滅の大記録を打ち立てることになるはずだ。

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