“天然の香りで健やかに” 平壌のヒット商品 金正恩総書記の指示で香料工場をリニューアル

清らかな松の香り、芳しいリンゴにナシ、さわやかなペパーミントの香り。朝鮮で天然香料を用いた商品の人気が高まっている。昨年10月、平壌香料工場が先端技術の導入により生産工程を一新したのを機に新商品の発売が相次いだ。平壌市内の百貨店や工場などでヒット商品とその理由について取材した。

平壌第1百貨店で香粧品を購入する女性たち(C)朝鮮新報

 香料は、香水や化粧品、ハウスホールド製品などのフレグランス(香粧品香料)と食用に使用されるフレーバー(食品香料)の大きく二つに分けられる。天然香料や合成香料を何通りにも組み合わせる調香という技術によって作られる。

 朝鮮の香料工業は、化学的に調合した香料よりも、空気清浄や薬理作用が見込める天然香料の製造に重点を置いている。平壌香料工場でも国内の野山で採取した花や葉、実、種などから抽出した精油を原料として香料を生産している。

 同工場の天然香料を使った製品は、平壌市内の百貨店で販売を開始するや否や市民の反響を呼んだ。

 「平壌香料工場の香料を用いた製品は独特な天然の香りが長く持続する特徴があります。製品を扱い始めてから、化粧品売り場を訪れるお客さまが日ごとに増えています」と話すのは平壌第1百貨店の化粧品販売スタッフ、コ・スンジョンさん(33)。

 化粧品売り場ではとくに香水の売れ行きが好調だという。

保湿クリーム、アロマキャンドル、部屋用芳香剤など豊富に取りそろえる(C)朝鮮新報

人気が高いのが松の香水で、清々しい森林の香りによるリラクゼーション効果だけでなく、銀イオン(Ag+)の働きで空気清浄の効果も兼ね備え、心身ともにメリットがあるという。

 香粧品以外にもショウガの香りの石けんや食器用洗剤、リュウキュウヨモギの香りの歯磨き粉、コノテガシワの香りの石けん、各種アロマキャンドルなどが人気商品だとコさんは話す。

 一方、平壌香料工場で生産されたフレーバーは、食料品の品質向上に一役買っている。各地の食料工場から「以前使っていた香料と比べて食料品の香りと味が格段に改善された」との声が届いているという。

 各種飲料や菓子などを生産するクムコプ体育人総合食料工場のハン・ミョンヒさん(48)は「ここの食品香料は品質も良く、また国産なので実利も大きい」と評価する。

 平壌香料工場の操業開始は2016年。食料・化粧品工業の発展のためには香料の問題を解決すべきという金正恩総書記の指示に従って、同工場の技術革新が進められた。

工場には香料研究所が併設されており、香料の研究と生産の一体化が実現している。最近は、バラ、ヒロハハシドイの花、スズランなどを用いた工業用香料を新たに開発した。

 また、植物と昆虫のコミュニケーションで香りが担う役割に着目し、これに基づいて果実増産が見込める天然香ナノスプレーを研究開発した。

多様な香料の研究開発を進めている(C)朝鮮新報

 このスプレーについて香料研究所のチェ・トゥングァン所長(69)は、「朝鮮の野山で採れる天然香料を主成分とした殺虫効果のある植物増強剤で、化学農薬の使用量を従来の10%程度に抑えられる」と説明する。すでに全国各地の農場、果実園に導入され、効果が認められているという。

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