親が接種後に熱 子は休み? 専門家「少しやり過ぎ」 長崎

長崎市教委が学校を通じて保護者に配った文書

 「新型コロナウイルスワクチンの副反応で家族が熱を出すと(子どもも)学校を休ませないといけない。(親は自宅で)安静にしていたいのに…」。長崎新聞の情報窓口「ナガサキポスト」に、長崎市内の小学校に子どもを通わせる保護者から、こうした取り決めを疑問視する投稿が届いた。取材すると、市教委は2学期開始直後、感染拡大防止を目的に市立の小中学校に対し「同居家族がワクチン接種後、発熱した場合」は休ませるようにと通知していた。専門家は「少しやり過ぎ」と指摘する。

 感染力が強いデルタ株への置き換わりが進み、文部科学省は新学期の感染拡大を懸念。8月20日付で、感染レベルが高い地域では、同居家族に風邪症状がある場合、登校を控えるよう求める事務連絡を出した。

 県内では8月中旬、新規感染者が100人を超える日もあり、県内全域に県独自の緊急事態宣言が出された。さらに同27日からは長崎、佐世保両市が「まん延防止等重点措置」に区域指定された。県教委などは文科省の通知にならい、新学期に備えた。

 ここで長崎市教委は一歩踏み込んだ。保護者に対し「感染拡大が進んでいる現在では、副反応であるかどうかに関わらず、同居家族がワクチン接種後に発熱などの風邪症状がある場合、出席停止となる」と通知。担当者はその意図について「接種のタイミングで発熱したとしても副反応と断定できない。感染拡大防止には必要な要請」とする。一方、県教委や佐世保市教委は、副反応と思われる場合の対応は保護者の判断に委ねている。

 長崎市教委の対応をどう見るか専門家に聞いてみた。日本ワクチン学会理事を務める長崎大学病院の森内浩幸教授は、接種と感染のタイミングが重なることは「ある」としながらも、「長崎市は『どこで感染してもおかしくないくらい市中に感染が広がっている』という状況ではない。少しやり過ぎではないか」と首をかしげる。

 通知の「発熱などの風邪症状」という表現の「あいまいさ」が引っ掛かるという。発熱だけならほぼ副反応とみていいと森内氏は言い、せめて「発熱及びその他の風邪症状」と書くべきとする。発熱や倦怠(けんたい)感は副反応だけでなく、感染症状にも共通する。区別するには、鼻水やせきなどの症状、味覚や嗅覚の異常が感染を疑う基準になるとしている。(山口栄治)

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