スポーツ通じ人つなぐ Joynus代表 小栁さん やりたいことSNSで共有 シンブンってものが、ありまして。令和のワカモノたち

 8月7日、長崎市現川町の現川森の丘公園にスポーツを楽しむ若者の笑い声が響いた。集まったのは20代を中心に約20人。「一緒にサッカーやりませんか」「ボランティアをできる人もお願いします」。LINE(ライン)など会員制交流サイト(SNS)を使って呼び掛けたのは同市の小栁壮平さん(21)が代表を務める「Joynus(ジョイナス)」。自分がやりたいスポーツを多くの人に呼び掛けて一緒に楽しむ団体だ。

■「長崎をもっと楽しい町に」


 副代表の林田龍矢さん(20)=同市=は小、中、高校の同級生。「壮平の思い付きが現実になって驚いてますよ」と笑う。2人は2019年3月に県立長崎東高を卒業。小栁さんはデンマークに留学し、林田さんは地元長崎大に進んだ。

 その年の11月、小栁さんから林田さんにラインで連絡が入った。「おい」「電話しようぜ」。卒業式以来初めての連絡。林田さんは「何だろう?」と思いつつも電話した。年末に帰国予定だった小栁さんは「長崎をもっと楽しい町にできないか」と約40分熱く語り、そのときに出たアイデアが、ジョイナスの原型になったという。

サッカーを楽しむ小栁さん(右)と林田さん(中央)=長崎市、現川森の丘公園

 小栁さんは、仕事と休暇をきっちり切り替えてプライベートな時間を大切にするデンマークの文化に触れ、「日本人は余暇の過ごし方が下手」と感じるようになった。さらに「長崎は田舎だから楽しめることが少ない」という声を聞くこともあり、「じゃあ自分が楽しめそうなことをみんなと共有したらいい」と考えた。ただ、「思い付き」を実現するまでにはいろいろあった。

■レジャー学ぶ


 高校卒業後、約9カ月のデンマーク留学を終え、2019年12月に帰国した長崎市の小栁壮平さん(21)。自分がやりたいことを古里のみんなと楽しみたいと思ったが、何から始めたらいいか分からなかった。力不足を感じ、「ちゃんとレジャーを学ぼう」と大学を探すと、香港、ドバイ、スイス、オランダにあった。再び留学を決意し、オランダにある大学のレジャーアンドイベントマネジメント学部に8月から通った。

 だが、居住していた地域が新型コロナウイルス感染拡大でロックダウンされることになった。その数日前の11月に帰国し、翌21年1月までオンラインで講義を受けたが、パソコン画面越しではグループワークへの参加が難しく、時差の問題もあり、結果的に自主退学した。約半年間とはいえ、「学べたことはプラス」と前向きにジョイナスの設立を進めてきた。

 ジョイナスは英語のJoin us(一緒に)とjoy(楽しむ)を掛け合わせた造語。今月から毎週土曜日にスポーツイベントを開くことを決め、長崎市の市民活動センター「ランタナ」に登録した。スポーツ傷害保険や施設使用料込みで1人1回500円。21日には野球、28日にバレーボールを企画していた。

 だが、感染拡大で19日に県独自の緊急事態宣言が出され、LINE(ライン)の登録者には中止を知らせた。

ボランティアと打ち合わせをする小栁さん=長崎市、現川森の丘公園

■「夏休みを取り戻せ」


 記者が小栁さんと出会ったのは今春。コロナ禍で思い描いた通りの大学生活を送れない若者3人を5月24日付の新聞で紹介した。その1人が小栁さんだ。掲載後、記者に連絡が入った。「いろんな人から新聞読んだよって言われて。知らない方からも連絡があって励ましてもらいました。反響大きかったです」 新聞は自宅にあるけど手に取ることは「ほぼなかった」。ただ、ジョイナスを構想し始めた頃から、両親がレジャーに関する記事を「載ってるよ」と教えてくれるようになった。今では自分から読むことも増えた。「全国的なニュースはほとんどネットで読んでるからローカルのページが中心です。記事に出てくる人に電話して、直接出向いたことも何回かあって結構役に立ってますよ」

 コロナ禍で止まったり進んだりの小栁さんだが、感染が収まることを願って秋には「夏休みを取り戻せ」というイベントも企画中。「また新聞に載せてくださいね」。会員制交流サイト(SNS)に加え、新聞も活用して、これからも人と人をつなげていくつもりだ。(山口栄治)

笑顔でスポーツを楽しむ参加者=長崎市現川町、現川森の丘公園

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