ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が観測する原始惑星系円盤とは?

【▲ アルマ望遠鏡によって観測された地球から比較的近くにある20個の原始惑星系円盤のリスト。ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡はこれらの中から17個の原始惑星系円盤の観測をおこなう予定になっています(Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), S. Andrews et al.; N. Lira)】

いよいよNASAの次世代宇宙望遠鏡ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が12月18日に打ち上げられる予定です。

ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡は、ハッブル宇宙望遠鏡の後継機で、口径6.5mの主鏡を持ち優れた感度と高い空間分解能赤外線を観測します。ちなみに、ハッブル宇宙望遠鏡の主鏡の口径は2.4mになります。

ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡は打ち上げられると、太陽に対して地球がつくる影の部分に入り、地球と一緒に太陽を公転しながら、観測をおこないます。

ファーストスターの発見や初期宇宙の謎の解明などに挑みますが、今回はそのミッションの中でも、9月22日にNASAが公開した記事を元に、いかに原始惑星系円盤を観測し、太陽系形成の謎に迫るのかについて、お話したいと思います。

■私達の太陽系はどのようにしてつくられたの?

まず、私達の太陽系がどのようにしてつくられたのかから簡単にみていくことにしましょう!

原始惑星系円盤は若い恒星の周りに存在するチリやガスの円盤です。惑星はこの原始惑星系円盤のなかで数百万年をかけてつくられます。そして、特に太陽の周りに存在した原始惑星系円盤を原始太陽系円盤といいます。

原始太陽系円盤のなかでどのようにして惑星が形成されたのか理解するために最も重要なポイントは太陽からの距離です。太陽に近ければ、水は蒸発して水蒸気になります。これに対して、太陽から離れていれば、水は蒸発せずにになります。この水が、水蒸気になるか、それとも氷になるか、の境界線を雪線といいます。

雪線の内側では、岩石や金属を主成分とする微惑星が形成されます。これに対して、雪線の外側では、氷を主成分にする微惑星が形成されます。そして、このような微惑星同士が衝突・合体を繰り返して、雪線の内側では、地球などの岩石惑星が形成され、雪線の外側では、木星などの巨大ガス惑星や海王星などの巨大氷惑星が形成されます。

ただ、私達の太陽系がどのようにして形成されたのかについては、まだよく解っていないことも多く、他の恒星の原始惑星系円盤について理解を深めることは、私達の太陽系がどのようにして形成されたのか、その謎を解明していくために、とても重要です。

■ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が原始惑星系円盤の観測に挑む!

冒頭の画像にある20個の原始惑星系円盤は、その円盤の外側の部分が、2018年にアルマ望遠鏡によって詳しく観測されました。

ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡は、その20個の中から、中心星の質量が太陽の0.5倍から2倍ほどになる精選された17個について、その円盤の内側の部分を、赤外線の中でも中赤外線(mid-infrared light)と呼ばれる波長を使って分光観測します。

研究チームによれば、この観測によって円盤のこの部分に含まれる「水、一酸化炭素、二酸化炭素、メタン、アンモニア」などの量を算定することが期待できるといいます。

原始惑星系円盤の内側は、太陽系なら、私達の地球などの岩石惑星が形成された領域です。この領域について詳しく解明されていくことは、とてもワクワクしますね。

なお、研究チームでは、このような特に水などの観測によって、生命が存在しうるハビタブルゾーンについての理解を深めることにもつながると考えています。

関連:宇宙望遠鏡「ジェイムズ・ウェッブ」仏領ギアナに到着

Image Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), S. Andrews et al.; N. Lira
Source: NASA
文/飯銅重幸(はんどうしげゆき)

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