機構側が新提案も労使交渉は合意に至らず キャンプ開始延期確実に

日本時間2月13日、メジャーリーグ機構は労使交渉を合意に向けて前進させるために、メジャーリーグ選手会に対して新たな提案を行った。機構側の提案には「最低保証年俸」「年俸調停前のボーナスプール」「ぜいたく税」「サービスタイム」という4つの主要な項目について、選手会への譲歩が盛り込まれていたが、選手会を満足させるには至らず、労使交渉が大きく前進することはなかった。スプリング・トレーニングの開始予定日まで1週間を切っているが、予定通りにスタートしないことが確実となった。

最低保証年俸

機構側は選手会に2つの選択肢を与えた。1つ目はサービスタイムに関係なく、最低年俸を63万ドルに統一するというもの。2つ目はサービスタイム1年未満の場合は61万5000ドル、1年以上2年未満の場合は65万ドル、2年以上3年未満の場合は72万5000ドルという段階的な最低年俸を設けるというもの。2年以上3年未満の最低年俸は前回の提案(70万ドル)から増額されている。ちなみに、現在の最低保証年俸は57万500ドルである。

年俸調停前のボーナスプール

サービスタイム3年未満の年俸調停権取得前の選手について、成績上位者のためのボーナスプールを創設することで双方は合意していた。選手会はボーナスプールの金額の希望を1億500万ドルから1億ドルへ引き下げていたが、機構側も今回の提案では希望額を1000万ドルから1500万ドルへ増やした。また、機構側は総合指標WARをボーナス査定に用いる仕組みを作るために、双方の代表者3名ずつによる合同委員会を設置することを提案。ただし、WARを算出している「ファングラフス」と「ベースボール・リファレンス」はWARがボーナス査定に用いられることに懸念を示しているという。

ぜいたく税

機構側はぜいたく税の対象となる年俸総額のラインを2023年までは2億1400万ドル、2024年は2億1600万ドル、2025年は2億1800万ドル、2026年は2億2200万ドルにすることを提案。前回の提案と比較して、最後の3年間は200万ドルずつ増額された。また、このラインを超えた際にドラフト指名権を没収するという提案を撤回し、選手会への譲歩を見せた。ドラフト指名権が没収されるのは2億3400万ドルを超えた場合(2巡目指名権)と2億5400万ドルを超えた場合(1巡目指名権)になるという。また、ぜいたく税の「リセット」ができる仕組みを撤廃することも提案した。

サービスタイム

機構側は各球団が若手有望株について故意にメジャー昇格を遅らせるなどのサービスタイム操作をすることを抑制するために、サービスタイム60日未満の選手がアウォードを受賞するなど特定の基準を満たした場合、1選手につき最大で2つのドラフト指名権を得られる仕組みを提案した。選手会は「与えられるドラフト指名権が1つだけでは十分でない」と懸念を示していたが、これを最大2つに増やすことで選手会に譲歩した形だ。国際ドラフトが導入された場合は、国際ドラフトの指名権も対象になる予定だという。

その他の提案

●ドラフトと国際FAに使用できる契約金枠の増額。2019年と比較して2300万ドル以上の増額となる。

●NBAのようなドラフト・ロッタリー制度(上位指名権の抽選制度)の導入。

●ドラフト前に健康診断書を提出した選手は、その指名順位のスロット額の最低75%の契約金を保証される。また、身体検査の結果で入団を拒否されることはなくなる(メジャーリーグ公式サイトのマーク・フェインサンド記者は「クマー・ロッカー・ルール」と呼んでいる)。

●健康手当の改善。

●1シーズンのマイナー降格回数に史上初の制限(5回まで)を設ける。

このほか、ユニバーサルDHの導入とクオリファイング・オファー制度の撤廃はすでに合意に至っているとみられ、選手会にとっては雇用創出と市場活性化のメリットがある。ポストシーズン拡大については、機構側が14チーム、選手会が12チームによるポストシーズンを希望しているようだ。

複数の項目について譲歩を見せた機構側だが、その譲歩は小さなものにとどまっており、選手会を満足させるには至らなかった。選手会が要望している収益分配制度の改革についても目立った進展はない。スプリング・トレーニングの開始が遅れるのは確実であり、今月中に大きな進展がない場合には、現地時間3月31日に開幕予定のレギュラーシーズンも延期されることになるだろう。

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