行方不明の認知症高齢者、早期発見へごみ収集車活用 藤沢

藤沢市役所

 認知症高齢者が地域で行方不明になるケースが増える中、藤沢市と藤沢署、藤沢北署の3者は24日までに、家庭ごみの戸別収集で市内をくまなく巡回している収集車の利点を生かし早期発見につなげるための覚え書きを結んだ。県内初の試みで、不審者情報も共有し犯罪の抑止につなげる。

 市内の行方不明者の届け出は2021年、230件に上り、半数近くを高齢者が占めた。市によると、高齢化の進行に伴い認知症のある高齢者らが行方不明になるケースが増加傾向にあるという。

 こうした状況を踏まえ、市と両署は行方不明者の発見のあり方を協議。家庭ごみの収集車100台近くがほぼ毎日住宅地を巡回していることに着目し、両署と収集車を管轄する市環境事業センターが行方不明者情報を共有する仕組みを構築した。

 具体的には、行方不明者の家族から捜索願が提出され、個人情報提供同意書が提出されたケースについて、署から同センターに行方不明者の情報をファクスで提供する。同センターから各車両に、行方不明になった日時や場所、対象者の年齢、性別、特徴などを無線で一斉に発信される仕組みだ。

 情報を受けた各車両の乗務員は、収集時や巡回時に通常業務と並行して対象者がエリア内にいないか注意を払い、発見した際には同センターを通じ署に連絡するほか、一時保護も行う。緊急性が高いと判断した場合には直接署に通報する。

 不審者情報については、署からの情報を市防犯交通安全課の防犯対策システムのメールで同センターに提供し、各収集車両と共有する。市や署は市内を巡回する収集車が不審者情報を共有していることを広く周知し、犯罪の抑止につなげる。

 これまで市は家族が同意したケースに限り防災行政無線を通じて行方不明者情報を発信してきたが、活用例は数件程度にとどまっていた。市地域共生社会推進室は「誰もが安心して暮らせる地域共生社会の実現へ向け、警察と連携し行方不明者を発見する可能性を高めたい」としている。

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