盲導犬拒否「医療機関」が最多、接種会場でも 国会論戦で指摘 厚労省担当者「あってはならない」

盲導犬訓練士の技術研修会で活躍する盲導犬=2016年撮影

 新型コロナウイルスワクチンの接種会場で盲導犬の同伴を拒否された問題が21日の参院厚生労働委員会で取り上げられた。厚労省の担当者は「身体障害者補助犬法に照らし、あってはならない」と答弁。問題提起した議員は直近1年間の拒否事例のうち、最も多かったのが医療機関とするデータを示し、法の周知徹底などで視覚障害者と盲導犬を支えていくことを求めた。

 立憲民主党の打越さく良氏は昨年6月、青森県の公設会場で「盲導犬は接種スペースまで入れません」と同伴を断られ、会場担当者に手を引かれ接種を受けた事案を説明した。日本盲導犬協会からの照会に、自治体側は「会場詰めの医師から『衛生上の理由』で盲導犬は待機させるよう指示された」と回答したという。

 2002年に成立した身体障害者補助犬法では、障害者の社会参加を促すため、公共施設や飲食店など不特定多数の人が利用する施設に対し盲導犬、介助犬、聴導犬の受け入れを義務づけた。厚労省の田原克志障害保健福祉部長はその趣旨を踏まえ「医療機関も適用対象であり障害者の補助犬同伴を拒まないのは原則。法の周知と理解をさらに徹底していく」と答弁した。

 同部長は「業界別のガイドブックも作成、配布している」と付言。打越氏は「『こういう本もある』とはユーザー側からは言い出しづらい。みんなで工夫して手を差し伸べなければ」などと呼び掛けた。

 日本盲導犬協会が扱った昨年4月1日から今年3月20日までの約1年間の拒否事案は全国で37件。場所別内訳は医療機関13件、飲食店9件、宿泊施設6件などで、統計を取りはじめた05年以降、初めて医療機関が最多になったという。打越氏もこのデータを引用し「あってはならないことだ」と指摘した。

 ワクチン接種を巡る拒否事案では「受け入れ経験のある病院に行ってほしい」、「犬は土足だからコロナを持ち込むリスクが高い」などの理由が示されたといい、同協会は「さまざま知見があるはずの医療機関でこのような事が起きるのは残念だ。皆に背景を正しく理解してもらい盲導犬とユーザーを支えてほしい」と訴えている。

 同協会によると、全国で活動する盲導犬は861頭(21年3月時点)。訓練センターは全国4カ所にあり、横浜市の神奈川訓練センターは国内唯一の訓練士養成機関となっている。

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