活発な星形成活動を示す赤い輝きに彩られた“きりん座”の渦巻銀河

【▲ 渦巻銀河「NGC 2403」(Credit: KPNO/NOIRLab/NSF/AURA/M. T. Patterson (New Mexico State University); Image processing: T.A. Rector (University of Alaska Anchorage/NSF’s NOIRLab), M. Zamani & D. de Martin (NSF’s NOIRLab))】

こちらは「きりん座」の方向約1000万光年先にある渦巻銀河「NGC 2403」です。渦巻銀河といえば、バルジ(銀河バルジ)と呼ばれる星々が集まった中心部分の膨らみを取り巻く渦巻腕(渦状腕)が特徴ですが、NGC 2403のバルジはあまり目立たず、渦巻腕もやや不明瞭に淡く広がっています。

そんなNGC 2403のあちこちには、赤色の領域が分布しています。これはHII(エイチツー)領域と呼ばれるもので、ここでは星形成活動によって数百万年の間に数千の星々が誕生することもあるといいます。HII領域の赤い光は、若くて高温な大質量星から放射された紫外線によって電離した水素ガスが放っています。この赤い輝きと、若い星々に彩られた渦巻腕の青い輝きは、NGC 2403で活発に星々が形成されていることを物語っています。

また、大質量星は恒星としての寿命が短く、質量が太陽の8倍以上ある星の最後は超新星爆発によって締めくくられます。星形成活動がさかんなNGC 2403では、2004年7月31日に日本のアマチュア天文家・板垣公一さん超新星「SN 2004dj」(II-P型)を発見しており、「ハッブル」宇宙望遠鏡などによる追跡観測が行われています。

なお、イギリスのアマチュア天文家サー・パトリック・ムーアによって1980年代にまとめられたアマチュア天文家向けの天体カタログ「Caldwell Catalog」(カルドウェルカタログ、またはコールドウェルカタログ)では、NGC 2403は「Caldwell 7」として登録されています。

冒頭の画像はアメリカのキットピーク国立天文台にある口径4mのメイヨール望遠鏡によって撮影されたもので、米国科学財団(NSF)の国立光学・赤外天文学研究所(NOIRLab)から2022年5月25日付で公開されています。

【▲ 2004年8月17日にハッブル宇宙望遠鏡が撮影したNGC 2403。右上隅に超新星SN 2004djの輝きが捉えられている(Credit: NASA, ESA, A.V. Filippenko (University of California, Berkeley), P. Challis (Harvard-Smithsonian Center for Astrophysics), et al.)】

関連:渦巻銀河の多様性。ハッブル宇宙望遠鏡が撮影してきた36個の銀河たち

■この記事は、【Spotifyで独占配信中(無料)の「佐々木亮の宇宙ばなし」】で音声解説を視聴することができます。

Source

  • Image Credit: KPNO/NOIRLab/NSF/AURA/M. T. Patterson (New Mexico State University); Image processing: T.A. Rector (University of Alaska Anchorage/NSF’s NOIRLab), M. Zamani & D. de Martin (NSF’s NOIRLab)
  • NOIRLab \- A Galaxy of Birth and Death
  • NASA \- Caldwell 7

文/松村武宏

© 株式会社sorae