【追う!マイ・カナガワ】辻堂海浜公園の交通展示館 なぜ年代物ばかり?

リニアモーターカーの予想図や、古めかしい電車運転シミュレーター(右)などを備える交通展示館=藤沢市

 「県立の交通展示館の展示が古すぎる。今の児童や生徒に幅広く支持が得られるとは思えない」という投稿が、横浜市泉区の40代の男性から神奈川新聞社の「追う! マイ・カナガワ」取材班に届いた。神奈川県が運営する唯一の「のりもの博物館」。昭和の時代が遠のきつつある令和の世、昔に戻りたいと日々思うアラフォー記者が取材を進めた。

◆タイムスリップ

 藤沢市の県立辻堂海浜公園内に同館はある。外観は東京ディズニーランドの「トゥモローランド」を思わせる近未来の雰囲気。開業は1991年5月。バブル景気が崩壊したころだ。

 コンセプトは「五感を使って交通の歴史と未来を体験!」。空と陸と海の交通の未来を模型展示で解説しており、年間約5万人の小学生らが訪れているという。県の藤沢土木事務所によると、「鉄道に特化した施設は数多くありますが、陸海空の全てを扱う施設はそれほどない」という。

 ただ、館内は男性の投稿通り、古さが目立ち、展示は90年代前半から更新されてなさそう。一昔前にタイムスリップした気分だ。

 今となってはリアリティーに欠ける「90年ごろの映像を使った電車運転シミュレーター」「21世紀はじめの県内の自動車専用道路網構想図」「90年代に人気だったが現在は販売終了した乗用車の模型」といった年代物の展示がめじろ押し。男性の「未来の交通の姿というよりも『1990年代前半に想定されていた未来の交通の姿』というネーミングでアピールしたほうが良いのではないか」との皮肉もうなずける。

◆バブル崩壊の余波

 なぜ、リニューアルされないのか? 同事務所の古河雅之さんは「バブル崩壊後は予算も限られ、展示物より園路や設備など利用者が安全安心に公園を使うことを重視してきたので」と打ち明ける。古い電車模型などは度々故障するため、地元のボランティアの力を借りながらメンテナンスに苦心してきたという。

 古河さんは、展示の古さについては「乗り物の技術革新がすさまじく、古めかしく感じるのは否めません」と認めつつ、「日々進化する最新技術情報は民間に任せ、子どもが安全を学ぶ第一歩として活用してもらえたら」とのことだった。

 今後も、展示のリニューアル予定はないというが、今春から施設の指定管理者に小田急電鉄が加わり、同社のノウハウを生かした活性化を目指すという。同社も「ロマンスカーミュージアム」(海老名市)の運営経験を生かし「子どもの成長に寄り添い、大人でも楽しめる施設にしたい」とのことで期待したい。

◆取材班から

 記者も展示をじっくり見て回った。レトロというほど古くはないが、30年前に構想したリニアモーターカーの展示パネルなどは、今となっては貴重なものかもしれない。スマホで調べれば何でも分かる時代だからこそ、「お父さんが子どもだった30年前は、こんな未来を想像していたんだよ」と子どもと会話するのも悪くない。皆さんも懐かしい乗り物に触れてみては?

© 株式会社神奈川新聞社