【厚労省薬価専門部会】日医、前回と同様の改定範囲「非常に厳しい結果」/令和5年度薬価改定骨子案

【2022.12.16配信】厚生労働省は12月16日に中央社会保険医療協議会 薬価専門部会を開き、令和5年度薬価改定の骨子案を示した。これに対し、日本医師会常任理事の長島公之氏は、改定の対象範囲が前回と同様の「平均乖離率の0.625倍」を超える品目となったことに対して、「非常に厳しい結果であると受け止めている」と述べた。物価高騰や医薬品の安定供給問題が医療現場に与えている影響への対応について不十分であるとの見方を示したもの。

日医、イノベーション評価には「今後、薬価上の問題を理由としたドラッグラグやドラッグロス解消の説明責任を」

日本医師会常任理事の長島公之氏は、「これまで再三申し上げてきた通り、医療現場では物価高騰や医薬品の安定供給上の課題が日常診療に大変大きな負担を与えております。このような状況下において、前回の中間年薬価改定と同様の改定対象と範囲とされたことは非常に厳しい結果であると受け止め」ていると述べた。その上で、「現在の安定供給に支障がある中で医療現場に与える影響がさらに大きくなることを強く懸念しております」とした。

また、不採算品目への特例的対応等については理解を示した。「一方、現下の厳しい状況を踏まえた緊急的・特例的対応として医薬品の安定供給に向けた一定の対応がなされることはやむを得ない部分もあるのではないかと考えております」とした。ただ、ビジネスモデルの再構築を並行して進めることを要請した。「今回の問題は企業の不適切な対応をきっかけとするものであることからすれば、安定供給が可能となる産業構造やビジネスモデルに再構築していく作業を並行して実施していくことが必須の前提になると考えて」いるとした。今後、結果の透明化も求めた。「その上で薬価上の対応をするのであれば今現在安定供給に支障が生じている品目を対象とするのが妥当であり、その他の政策上の対応がどのようになるのか明らかにすること、そして今回講じる薬価上の対応によりどのように問題が改善されるのか、現場に説明できるよう状況の監視が行えて、確実に患者さんへの不利益にならないような方策を明確にすることが必要であると考えます」と述べた。
薬価の引き上げによって企業が参入してくることは牽制した。「薬価の引き上げがなされたからといって安定供給に責任を持てない企業が参入してくるようなことがあっては本末転倒でありますので、そのあたりは国及び製薬業界としても供給の安定化に向けて責任ある対応していただくよう強く求めたいと思います」とした。

イノベーションの評価については「対応すべきものではない」との考え。「イノベーションの評価については本来中間年改定で対応すべきものではないと考えております。ただこちらもドラッグラグへの懸念や物価高騰による影響による懸念の声も鑑みた上での極めて例外的な対応であると受け止めております。今回、こうした極めて例外的な対応を行う以上、薬価上の問題を理由としたドラッグラグやドラッグロスが今後確実に解消されるよう先発医薬品メーカーには当事者としての対応を明らかにして、説明責任が果たされることを強く求めたいと思います」(長島氏)とした。

「供給体制全体に関するパッケージとして示されるべき」「医療現場に与える影響も充分考慮して議論を」

長島氏は、「さらに現在の安定供給上の問題についてですが、医療現場の感覚としては一般的な処方内容の多くに不安定供給品が含まれてしまっているという印象です。この問題解決のためには産業構造やビジネスモデルの転換が求められることからすれば、根本的な解決には相当な時間がかかるものと予想され、その間、医療現場は処方に対して追加的な負担を担い続けることになります。この場は薬価専門部会ですのでこれ以上は申し上げませんが、今回、安定供給への対応として薬価上の対応が示されましたが、現場感覚としてはそうした対応だけでは到底不十分であり、供給体制全体に関するパッケージとして示されるべきと強く要望したいと思います。そして、今回の臨時的・特例的措置によって安定供給やイノベーション推進の課題が解決するものではありません。そのため、今後の薬価制度改革の議論やそれ以外の場において課題解決に向けてしっかりと対応すべきであります。またその際には医療現場に与える影響も充分考慮して議論すべきと考えております。最後に、薬価の中間年改定は2年に一度の通常改定とは異なるものであり、今回の大臣合意や本日提出された資料を見る限り、通常年度の改定とは異なる位置付けであると認識しているところであります」と述べた。

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