抗インフル薬の原料製造へ ベアフット社、沖縄高専の技術活用 ベトナム企業と工場新設

沖縄工業高等専門学校内に設けたシキミ酸抽出システムで実証実験するベアフットドクターズ沖縄の林健太郎代表(同社提供)

 医療研究のベアフットドクターズ沖縄(名護市、林健太郎代表)は来年にも、ベトナムで抗インフルエンザ薬(通称タミフル)の原料となるシキミ酸の製造に乗り出す。現地の製薬企業と共同企業体を立ち上げ、ベトナム北部に工場を新設。ベアフット社が国立沖縄工業高等専門学校内で確立した技術で、八角(トウシキミ)からシキミ酸を抽出する。年間20トンの生産を目指す。(政経部・大川藍)

 同社が開発したシステムは、純度99%以上のシキミ酸を、従来製法の2倍の高濃度で抽出できるほか、通常5日間かかる工程を16時間に短縮した。今年10月の第52回県発明くふう展では、最高位の県知事賞最優秀賞に選ばれた。

 ベトナムは八角の主要な生産地だが、世界に供給されているシキミ酸の8~9割は中国で製造されている。シキミ酸は需要の高まりから価格が高騰していて、今後生産される後発薬の備蓄に向けて安定供給も課題となっている。八角の産地であるベトナムへの工場設立は、供給拡大への一助になることが期待されている。

 ベトナムで製造したシキミ酸はインドの原薬メーカーに輸出し、同国産の原薬を日本に安価で輸入することも見込んでいるという。

 また同社は、シキミ酸が八角だけでなく、亜熱帯気候のさまざまな植物から高濃度で抽出できることに着目。将来的には、タマヌオイルの生産などに使われ、県内でも多く見られるヤラブ(テリハボク)の実の搾りかすからシキミ酸を県内製造する構想を描く。

 林代表は「人の生活を守る医薬品の確保は、安全保障の面で武力行使よりはるかに効果がある」とし、県内での事業立ち上げに意欲を示している。

 林代表は琉球大学医学部を卒業後、国境なき医師団で医師としてミャンマーの人道支援に携わった。現地で国際人道支援団体を立ち上げ、同国の産業創出を目的とした八角の植樹事業などを手がけている。

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