[社説]嘉手納F35部品落下 重大事故の認識欠ける

 米軍嘉手納基地を離陸したF35Aステルス戦闘機が、重さ約907グラムのアクセスパネルを飛行中に落とした。米軍は「海上で外れたとみられる」と説明している。

 機体は18日午前10時25分ごろ、コックピット右側の下にあったパネルが欠損した状態で着陸した。米軍から日本側への通報は19日午前11時ごろで、丸1日がたっていた。

 日米合意では、危険物の落下や日本人に傷害、損害を与える可能性がある事故では米軍司令官から日本の警察署や海上保安庁、沖縄防衛局へ迅速に通報すると定めている。

 パネル落下事故で、米軍は「被害は確認されていない」と付け加えているが、それより日本側に通報するのが先である。日本政府は合意事項の順守を米側に強く働きかけなければならない。

 いつ、どこで落としたか分からなければ、住宅地上空ではないと言い切れないはずである。海上だとしても、重さ1キロ近い部品が落ちれば船舶への危険がある。重大事故の認識が欠けている。

 アクセスパネルは外部と電子機器をつなぐ装置などを覆う部品だ。2017年にも同型機が嘉手納基地を離陸後、同じ部品を落としている。

 今年11月のオスプレイ墜落後、空軍は同型機の飛行を続けたが、機体の不具合が見つかったという理由で8日後にオスプレイ全機の飛行停止を決めた。あまりにお粗末だ。

 空軍はパネル落下事故の翌19日にも同型機の訓練を継続した。原因究明と実効性のある再発防止策を公表するまで飛行を中止すべきである。

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 パネルを落としたF35Aは米アラスカ州アイルソン空軍基地に所属する外来機だ。これまで嘉手納に常駐していたF15の老朽化に伴い、F22、F15Eなどとともに、暫定的に巡回配備されている。

 F15もたびたび沖縄周辺で部品落下などの事故を起こし、老朽化を指摘された。それに代わったF35Aが同じ事故を起こすようでは機体だけではなく、米軍の整備や運用の体制にも疑問の目が向く。

 巡回配備が始まった昨年11月から今年10月までの1年間で、嘉手納基地周辺の騒音は大きく増えている。

 環境基準値を超えた騒音発生回数は嘉手納町屋良で前年同期より2742回増の1万5221回、同町嘉手納で1074回増の1万5361回などとなった。

 騒音被害とともに、急上昇や急旋回といった激しい訓練が住民を不安に陥れる。

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 米空軍は11月、嘉手納基地に無人偵察機「MQ9」を無期限で配備した。その後に、日本政府はMQ9が海外で18年6月から22年7月の約4年間で少なくとも墜落4件を含む7件の事故を起こしていたことを明らかにしている。危険性を除去できない。

 19日夜には3年半ぶりに嘉手納基地へのパラシュート降下訓練を県や周辺自治体が中止を求める中で強行した。

 目に見える負担の増大であり、受忍限度を超えている。

 日米両政府は住民の声に耳を傾け、嘉手納基地の有効な負担軽減策を考える新たな枠組みを設ける必要がある。

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