宮古島初の「観光大学」、キャンパス来春開設へ 地元企業は返済免除の奨学金を用意 ヒルトンなどホテルも人材求める

[リポート’23 宮古島発]

 宝塚医療大学(兵庫県宝塚市)観光学部観光学科の宮古島キャンパス開設が2024年4月に迫った。宮古島市で初の高等教育機関となる。旧城辺中学校を改修したキャンパスで1年次に英語など基礎を学び、2年次以降は兵庫県の尼崎キャンパスで専門科目に分かれる。島内のホテルなど企業が奨学金を出し、卒業後に一定期間勤務すれば返還義務を免除する制度も導入される予定だ。これまで高校卒業後に島を離れて戻ってこなかった人材の確保にも期待が寄せられている。(宮古支局・當山学)

 宮古島キャンパスは2階建て2棟。木造の内壁など活用できる部分は残しながら、100人の定員全員が集える大講義室などを整備中だ。建設中の学生寮は127室あり、島外の学生や海外留学生を受け入れる。どちらも外壁工事をほぼ終えた。

 キャンパスから徒歩で移動可能な場所にある旧市立図書館城辺分館を、昨年4月に大学付属図書館宮古島分館として開館。取り壊す予定だった施設を再活用し、地域住民に開放している。

■互いの思惑一致

 宝塚医療大は20年、医療系の知見を他の分野に生かそうと、健康増進・維持・回復・疾病予防に役立たせる「ヘルスツーリズム」などを学ぶ観光学部の新設を目指した。

 一方、市にとっては21年の統廃合で閉校した城辺中の跡地利用になるほか、1年次だけでも学生が宮古島にとどまることで保護者の負担を減らせる。卒業後の人材引き留めにつながるメリットもあり、互いの思惑が一致した。

 元市職員の上地昭人さんを観光学部設置準備室宮古島分室長に据え、市が建物を無償で譲渡して協力態勢を築き、準備を進めた。新型コロナ禍やロシアによるウクライナ侵攻の影響で建設資材の納品が遅れ、寮の完成が間に合わずに23年の開設は延期となったが、今年10月に文部科学省の設置認可が下りた。

■地元就職後押し

 宮古島の企業への就職を見据え、1年次は語学以外に宮古島の文化やクイチャー、空手・古武道などを学ぶ。準備室の萩原大輔さんは市内の高校への説明会で「自分たちのまちのセールスマンになることは観光の第一歩」と生徒にPRしている。

 卒業後に一定期間働くことを条件に、ホテルなどの観光関連企業が学生に奨学金を出す制度も導入予定。各企業で枠があるものの、所得や成績などで制限しない。

 企業としても宮古島で学んだ優秀な人材を求めており、既に南西楽園リゾート、ヒルトン沖縄宮古島リゾート、24年開業予定のローズウッド宮古島が応じている。今後はホテル以外にゴルフ場やウエディング会社、航空会社などにも広げていく。

 萩原さんは「インターンシップやアルバイトを通じて学生は企業への愛着を持つようになる。企業も学生時代から接していればミスマッチがなくなる。観光専門の人材確保に一役買える」と期待を寄せている。

旧城辺中学校を活用する宝塚医療大学宮古島キャンパス=15日、宮古島市城辺福里
学生寮の一室

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