野外焼却の延焼相次ぐ 栃木県内1~3月で44件 野焼きやごみ焼却、死亡例も 県「農薬など別方法を」

炎を上げる河川敷=3月中旬、上三川町東汗

 県内各地で野外での焼却に伴う下草火災が相次いでいる。県警などによると、1~3月に県内で発生した下草火災66件のうち、田畑での野焼きや庭先でのごみの焼却などから火が燃え広がった火災は44件に上ったことが20日までに分かった。さくら、大田原の両市では1月、火が燃え移り計2人が死亡した。廃棄物処理法は庭先でごみを燃やす行為を禁止している。病害虫駆除を目的とする野焼きは禁じられていないが、県は推奨していない。担当者は「農薬などを使えば効果的な駆除ができる。野焼き以外の方法を検討してほしい」と呼びかけている。

 県警捜査1課によると、同課が認知した1~3月の下草火災は前年同時期比で5件減った。発生場所は田畑や雑木林、河川敷など。延焼した火災は枯れ草の野焼きが燃え広がるケースが目立つが、家庭ごみや伐採した木の枝などを燃やした事例もあった。

 大田原市倉骨では1月28日午後、農業男性(68)が田んぼで野焼きをしていたところ、衣服に火が燃え移った。男性は全身のやけどで死亡した。さくら市松島では同19日午前、山林で家庭ごみを焼いていた火が延焼し、無職女性(88)が死亡した。同課の担当者は「野焼きをする場合、各地の消防本部に届け出し、安全を期してほしい」と話す。

 県によると、家庭ごみや刈り取った草、木の枝などを燃やすことは廃棄物処理法で禁じられており、担当者は「燃やすのは控えてほしい」と指摘。一方、営農や河川管理などで必要な場合は例外的に認められる。

 相次ぐ下草火災や死傷者の発生を受け、県は1月下旬、県内市町や各JAに対し、野焼きではなく、薬剤散布や病気になりにくい品種の作付け、草刈りなどで病害虫を防除するよう指導を求める通知を出した。

 塩谷町では2023年2月、下草火災で男性1人が死亡した。同町では今年、風や乾燥など条件が悪ければ野焼きをしないようこれまで以上に呼びかけた。一方、関係者は「禁じられていない野焼きを止めることは難しい。自己責任だと周知し、それぞれ注意してもらうしかない」と対策に苦慮する胸中も明かす。

 県消防防災課は、屋外で火を扱う場合、燃えやすい化学繊維の服を避けて必要な消火手段を事前に用意するなど、十分な対策を講じるよう訴えている。

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