【現場を歩く】〈ホイスト機器で世界有数のキトー・本社工場〉高信頼性のものづくりを確立

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 ホイスト機器大手のキトー(社長・鬼頭芳雄氏)は、主力の巻上機(電気チェーンブロック・手動チェーンブロック・レバーブロック)市場において日本で6割、米国で4割、カナダで5割超、中国で3割弱(ワイヤロープホイスト)の高シェアを握る。山梨県甲府市に近い巨摩郡昭和町の本社工場は世界50カ国以上への供給基地であり、グローバル生産を支えるマザー工場でもある。障害者雇用にも熱心に取り組み、2017年度の障害者雇用職場改善好事例(高齢・障害・求職者雇用支援機構)では最優秀賞に選ばれた。(谷山 恵三)

品質重視で主要部品を自社生産

 本社工場の敷地は東京ドーム約3・7個分で700~800人が働く。巻上機の年産能力は電動製品が7万1千台、手動製品が42万台。2017年度後半から国内向けも7割を占める輸出も忙しくなり、電動製品の18年度生産は能力見合いとなる見通しだ。

 本社工場にはクレーン工場棟や研究開発棟もあるが、今回は巻上機関係の工場棟を歩いた。材料・チェーン製造・部品加工・製品組立まで一貫した生産管理体制を敷くのも本社工場の特徴。例えば、電動品のモーターフレームやギアケースなどのアルミダイカスト品は、溶解~バリ取り・ショットブラストまでを全自動で行う800トンラインなどで生産し、レバーブロックのレバーはトランスファープレスで量産する。

 なぜ部品まで自社生産にこだわるのか。チェーン製造本部長の山田浩執行役員は「当社製品が稼働中に故障すれば重大事故につながりかねない。信頼性は極めて重要であり、主要部品を自社で生産、管理することでより高い信頼性が確保できる」という。

「キトーのクサリは切れない」の定評

 チェーン製造では最大13ミリ径の線材を母材に伸線・溶接・熱処理・めっきを行う。「キトーのクサリは切れない」と定評があるが、ノウハウの詰まった現場力と厳格な試験体制が強靭なチェーン製造の決め手になる。ちなみにチェーンの1ユニットは200キログラムで3ミリ径なら500メートル、12ミリ径なら100メートルの長さになる。最近は建築現場や鉱山現場などの繁忙感を反映し、5~7ミリ径の生産水準が特に高い。

 高信頼性を求められるチェーン製造に当たり、マンガン・ボロン鋼や含ニッケル鋼などの線材にはどんな期待があるのか。山田本部長は「より高強度の線材をメーカーと共同で追求し続けている。細径化で装置全体を小型化したり、線径を変えずに耐久性を高めたりできる。北海油田やカナダのオイルサンドなど低温環境に適した線材の開発も絶えず進めている」という。

 例えば米国市場は鋼材調達コスト上昇を製品販価に反映する合理的な商慣行が定着しているが、鋼材値上げを受けての製品値上げは国内では容易ではない。輸入材が一つの選択肢になるはずだが、「素材の信頼性に加えて輸送コスト、品質管理コストも考慮し、国内材からの切り替えは現在考えていない」そうだ。

セル生産方式導入で在庫圧縮

 電気チェーンブロックの組立では作業者が一人で1台を組み立てるセル生産方式を導入している。作業者は部品置き場を回って専用台車に1台分の部品を集め、作業台で組み立てる。ファスナー(締結部品)は1台分ずつ専用容器に差し込んであり、部品を集める際にその容器も持っていく。

障害者雇用に力/「定着を第一に」の精神で

 本社工場は受注後翌日出荷が基本。電気チェーンブロックは10年以上前にトヨタ生産方式を採り入れた時期にセル方式に切り替えた。それまでは効率性を追求した組立ラインで多くの仕掛品在庫を持ちながら生産していたが、海外向けの出荷が増えて製品の種類が増えたのを契機に、在庫の持ち方を抜本的に見直した。

 以前は共通する部材の組立まで行っておき、(電圧が国・地域で異なるため)向け先が決まった段階で適切なモーターを組み込んで出荷していたが、現在は受注後に初っ端のギアボックスの組立から行っている。

障害者と職場の適性を重視して

 障害者雇用は会社の草創期から行っていたが、鬼頭社長の「企業ができる最大の社会・地域貢献は雇用機会の創出と維持」という考えに立ち、11年度に全社プランを本格スタートした。18年4月時点の障害者雇用率は6・79%で法定雇用率2・2%を大きく上回る。

 雇用に当たっては「定着を第一に考える」と人事総務部人事グループの坂本美和さんは話す。採用前に必ず複数職場での実習を行い、本人と職場がマッチングしているかを十分に検討する。その上で採用が決まれば、「仕事に人を合わせるのではなく、その人に仕事を合わせる」「何ができるかではなく、どうすればできるかを本人と周囲が話し合って決める」そうだ。

障害者28人が生産現場を支える

 障害を持つ従業員は現在34人で、本社工場勤務33人のうち28人が生産現場で働く。生産現場14職場のうち11職場で何らかの障害のある人が働いている。工場を歩く中で何人かを見かけたが、それぞれが持ち場を任され、工場全体のスムーズな流れにおいて役割を果たしていた。

 職場環境やコミュニケーションツールの充実も、十分な検討と丁寧な話し合いを経ながら継続的に進めている。