【現地ルポ】〈新日鉄住金のマレーシアEG事業ニッポン・Eガルブ〉「改善」奏功、年産10万トンに

日本と連携し「一貫」生産

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 新日鉄住金のマレーシア電気亜鉛めっき鋼板(EG)事業、ニッポン・Eガルブ・スチール(社長・花田典久氏、略称・N―Eガルブ)が品質や生産性向上を着々と進めている。同社の取り組みを現地で取材した。(ペナン=黒澤広之)

 当時の新日本製鉄が阪和興業と共にN―Eガルブへ出資したのは2010年。この際に「ニッポン」を冠する現社名となり、翌年には新日鉄が出資比率を50・1%へ引き上げ連結子会社化した。

 N―Eガルブはもともとペナンの名門企業、タット・ギアップ・グループが新設した工場。これを新日鉄住金が獲得した狙いは、海外現地へ進出する日系電機メーカーの安定調達に向け高品質なEGを現地生産し、当時急増していた通商摩擦のリスクを回避する点にある。

 新日鉄住金グループ入り後、N―Eガルブには日高容氏を社長として派遣し、新日鉄住金材に相当するEGを造れるよう設備や現地スタッフのレベル底上げを進めてきた。

 2年前に日高社長からバトンを受け継いだ花田社長の下、これら施策が徐々に結実。一昨年は薄型テレビ向けの好調、昨年は生産性や歩留まり向上が寄与し、販売量は年間10万トンを突破している。

 「新日鉄住金の次工程として、マレーシアで高炉一貫製鉄所と同等のサービスをお客様にご提供していく」と同社の使命を語る花田社長。その施策はさまざまな点で地道な取り組みを積み重ねたものだ。

 原板を供給する新日鉄住金の製鉄所と対話を密に行い、ニーズを常に共有。デリバリーではEG原板で運べるメリットを生かし、日本からペナンへのダイレクト配船で納期短縮を図っている。海運会社とも連携し、原板を取り扱う港湾荷役の品質向上にも取り組んでいる。

 設備面では原板の溶接から脱脂処理、水洗や耐指紋処理など、あらゆる工程に新日鉄住金の技術を投入し、品質や歩留まりを向上。床にはバーコードを入れ、異材が入らないようトレーサビリティーも強化した。

 人材面では、日本から花田社長はじめ8人(うち1人は阪和の総務担当)を派遣。生産現場や設備、営業、そして品質管理のプロフェッショナルが常駐し、技術サービスを含めEGを現地生産するメリットを追求している。地場コイルセンターとの連携を含め、花田社長は「お客様のパートナーとして付加価値を付けるための愚直な取り組みは、N―Eガルブへの参画当初から一貫して変わらない」と話す。

 一方、N―Eガルブへ資本参加した当時と変わらず通商摩擦の懸念は今もくすぶり続けている。EGの現地生産体制は整ったものの、原板の冷延鋼板は日本からの輸入。この冷延をめぐりマレーシアの国内メーカーはアンチダンピング(反不当廉売=AD)提訴の動きを見せ、16年には韓国や中国、ベトナム材にAD措置が課された。対象から外れた日本材へもたびたび警告が発せられている。

 通商問題を確実に回避するため、N―Eガルブが日本から調達する原板価格は16年以降、アセアン市況と共に上昇が続く。ただEG価格への転嫁は十分でなく「再生産可能な価格水準を確保できていない」(花田社長)のが実情だ。現地生産を続けていくためにも、サービスや価値を説明し値上げへの理解を求めている。

 新日鉄住金は15年の生産再編で、国内でのEG生産は君津製鉄所と広畑製鉄所の2カ所へ集約した。N―Eガルブは「第3のEGL」として意義が高まっている。今後もその価値を磨き続けるべく、7月からは営業パーソンを1人増員。マレーシア周辺市場を含めた新たなEGの用途開拓にも乗り出している。

 稼働率が上がっていることもあり、安全教育にも改めて力を入れている。ローカルスタッフに議論を促しながら八つの項目に安全ルールをまとめ、今月にもその説明会を開く予定だ。日本の大学で学んだ経験あるスタッフの育成も進めながら顧客との信頼関係を深め、海外でEGを現地生産する価値を高め続けていく。