野球振興の新たな一歩 プロアマの垣根を越えた「東大球場スポーツデー」

7月1日に行われた「東大球場スポーツデー」の様子【写真:広尾晃】

東大・浜田監督「野球を楽しんで、頭も良くなって」

 7月1日、梅雨が明けた東京大学野球場で「東大球場スポーツデー」が行われた。今回で2回目の開催。昨年の第1回は大学硬式野球部員が指導し、小学校低学年以下の子供に野球の楽しさを体験してもらったが、今回は東京大学、明治大学の野球部員に加え、NPB4球団の普及担当スタッフが参加した。プロとアマの合同での野球普及イベントは、過去にほとんど前例がない画期的なことだ。

 快晴の東大野球場には、64人の子供と父兄が参加。史上最も早い梅雨明けで30度を超えた晴天の下、東京大学硬式野球部の浜田一志監督が開会宣言を行った。

「東京大学スポーツデーを始めます。今年はプロ野球のお兄さん、おじさんたちも参加してくれました。皆さん野球を楽しんでください。せっかく東大にいるんで、頭も良くなってください!」

 ユーモアあふれる言葉に、父母からも笑いがあふれた。

 64人の子供たちは3つのグループに分かれた。ホームベース周辺には西武とロッテ、レフト付近ではDeNA、ライト付近では巨人のアカデミー指導員や普及振興スタッフが、東大、明大の選手とともに子供たちを指導した。

 準備体操から始まって、ボール投げ、ゴロのキャッチ、ティーボールでのバッティング、簡単なゲームと、体験メニューは3つのグループともほぼ同じだったが、子供たちにかける言葉や動作の指導法は球団によって異なる。

 指導の補助をする学生にプロのスタッフが、「危ないから、前へ出ないように言って」「いいスイングをしたら、どんどん褒めてね」とアドバイスをする。

 子供たちの周辺には、選手やプロスタッフから指導を受ける我が子の写真を撮る父母の姿があった。

プロのノウハウを大学が共有すれば裾野は30倍に

 一方、バックネット裏では東大・浜田監督による「賢い子供の育て方」と題したミニ講座が行われた。

 浜田監督は、発達心理学の観点から野球が脳の発達にいい刺激があることを強調した。東大生の5~9歳時の習い事のベスト3は「水泳、ピアノ、野球」であり、全国平均の2倍だったことを紹介。野球は、脳が発達し、思考力がつく上に、接触プレーが少ないので安全で、社会性を学ぶことができるものだと訴えた。

 適度に水分を摂りながら約1時間の体験教室で、子どもたちは夢中でボールを追いかけていた。

 このイベントに協力したNPB(日本野球機構)の平田稔野球振興室長は次のように語る。

「東大の浜田監督が、NPB12球団の普及部門の会合を見に来られたのがきっかけで、NPBに依頼が来ました。我々としては、そういう垣根を取っ払って一緒に普及活動をしたいという考えですから、お引き受けしました。

 各球団のスタッフは、普段アカデミーで専門に普及活動扱っている人々ですから、技術や健康・安全管理のノウハウを持っています。これを学生さんたちも是非学んでほしいと思います。どういう形になるかわかりませんが、今後も可能な範囲で協力したいと思っています」

 東京大学の浜田監督も続ける。

「昨年から始めたイベントですが、今年は、昨年同様に子供たちに野球を教えること、そしてプロアマ一体となって野球振興するという2つの目的になりました。プロ野球チームは12球団、大学野球は380チーム。12球団の普及のノウハウを大学が共有すれば、裾野が30倍に広がります。今日は、30倍に広がる最初の細胞分裂だったということです。ここから広げていきたいですね」

 プロとアマの垣根を越えて、野球振興の新しい一歩が始まった。(広尾晃 / Koh Hiroo)

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