大浦天主堂キリシタン博物館 研究課長 内島美奈子さん(34) 観光名所が特別な場所へ 貴重品の発見に期待

 4月に大浦天主堂(長崎市南山手町)敷地内に開館した「キリシタン博物館」の研究課長として、主に美術部門を担当する。「“奇跡”が起こった場所で働くことは光栄」と調査研究に励む。
 大浦天主堂は1865年、長崎・浦上村の潜伏キリシタンと宣教師が出会った「信徒発見」の舞台。「ここでの出来事があったからこそ、その後の各地の信徒発見につながった。特別な場所として世界に認められた」と世界遺産登録を喜ぶ。
 展示品は約130点。フランス人宣教師のド・ロ神父が布教用に作らせた10種類の「ド・ロ版画」の版木など珍しいものも多い。表に出ていないものを含めると所蔵品は約2千点に上る。開館後、ロザリオや十字架といった19世紀の再布教期の信仰品などを預けにくる信徒もいる。「(日本にキリスト教を伝えた)ザビエル時代のものなど、さらに貴重な品が出てくるかもしれない」と期待を抱く。
 福岡県出身。大学時代に「キリスト教美術」を専攻し、1年間のイタリア留学を経験。同国やフランスなどで100以上の教会を巡り、教会画や装飾を勉強した。だから、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の諮問機関が教会に重点を置いた推薦書に“待った”を掛けたことは理解できた。
 「世界にはもっと古い教会がたくさんある。潜伏キリシタン遺産は、やはり歴史。250年の間、ひそかに守り続けてきた伝統を残していくことが大切」
 登録を機に、大浦天主堂は観光名所から重要な意味を持つ特別な場所として認識されていくだろう。ただ、宗教的な話はハードルが高く、敬遠されがちだ。「『教会がきれい』が入り口でもいい。ついでに博物館に寄って少しでも興味を持ってもらえればうれしい。今後は子どもも楽しめるような仕掛けも考えていかなきゃですね」と意欲を見せた。

「潜伏キリシタンの伝統を残していくことが大切」と話す内島さん=長崎市、大浦天主堂キリシタン博物館

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