被爆地域拡大 前進なし 体験者助成「脂質異常」追加へ

 長崎の被爆者5団体は9日、安倍晋三首相ら政府代表と面会した。長年要望している被爆地域是正について、加藤勝信厚生労働相は放射線被ばくの科学的知見がないとして、改めて拡大に否定的な立場を表明。被爆者側は事実上の「ゼロ回答」と落胆の表情を見せた。
 国が定める長崎の被爆地域は爆心地から南北12キロ、東西7キロのいびつな形になっている。原爆被害は爆心地から円形状に広がったとして是正を求めたのに対し、加藤厚労相は「被爆地域の拡大を行うことは、なかなか難しい」と答えた。
 県被爆者手帳友の会の井原東洋一会長は取材に「全くのゼロ回答。科学的知見だけを言う」と批判。県被爆者手帳友愛会の中島正徳会長代行は「前進のない回答を繰り返すなら要望しない方がまし」と憤った。
 一方で加藤厚労相は、長崎市の国指定史跡「長崎原爆遺跡」の旧城山国民学校校舎への来館者用トイレ設置に助成を検討する考えを示した。被爆地域外で原爆に遭った「被爆体験者」の支援に向け、心的外傷後ストレス障害(PTSD)がある人への医療費助成制度の対象となる症状に「脂質異常症」を来年度に追加する方針も述べた。
 被爆者側は、2020年東京五輪の閉幕日が長崎原爆の日に重なることに触れ「世界に向けた平和のメッセージを(閉会式の)演出に加えてほしい」とも要望した。

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