新日鉄住金と技研製作所の鋼管杭圧入「ジャイロプレス工法」、「大規模津波対策」で初採用 高知海岸で南海トラフ地震に対応

 新日鉄住金は30日、技研製作所と共同開発した先端ビット付鋼管杭の自走式回転圧入工法「ジャイロプレス工法」が高知県の高知海岸で地震津波対策に採用されたと発表した。南海トラフ地震を想定した対策で、鋼材重量は1万トンを超えるものとみられる。大規模な津波対策としては初採用で、今後も採用拡大が期待される。

 国土交通省四国地方整備局高知河川国道事務所は、高知海岸で2011年度から南海トラフを震源とする地震・津波に対し堤防耐震や液状化対策を進めてきた。

 今回、液状化による堤防の沈下・変形を鋼管杭の自立壁により抑制する対策工事を実施。施工時に既設堤防を撤去せずに鋼管壁を構築できる工法として本工法が採用され、すでに新居工区・戸原工区が完成した。

 本工法は、自走式回転圧入機「ジャイロパイラー」により先端ビット付鋼管杭を回転切削圧入し、施工が完了した杭を反力としながら杭頭部を自走して鋼管杭を列状に連続して回転圧入する。河川護岸や道路擁壁などの壁構造物や基礎構造物などを構築するもので、04年の市場投入以来多くの採用実績を重ねてきた。

 低振動・低騒音で掘削排土がないなど環境に優しい特長を有するほか、作業構台を必要とせず省スペース施工が可能で、狭隘(きょうあい)地施工や近接施工にも威力を発揮する。さらに硬質地盤掘削用ビットを取り付け回転力と圧入力で地盤に貫入させることから堅固な地盤への施工も可能。既存の鉄筋コンクリート構造物も打ち抜くことができ、既設構造物の撤去・解体工事が省略できるなど工期やコストの削減を図れる。

 同社では、今後も狭隘地での優位性や捨石への打ち抜きが可能な特長を生かし、防災・減災分野における海岸堤防・防潮堤への適用を拡大していくほか、災害の早期復旧などにも貢献していく方針。

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