見逃し&空振り奪三振王は…パの“表彰されない部門ランキング”【投手・守備編】

楽天・岸孝之【画像:(C)PLM】

対左打者被打率、ピンチで強い得点圏被打率のトップ3も…

「野球は数字のスポーツ」と言われる。今季も、選手の特徴や凄味を示す数字がとりどりと残された。27日に「NPB AWARDS 2018 supported by リポビタンD」で表彰された項目以外に、知っていれば野球の面白さが深まる投手と守備の部門別ランキングベスト3を紹介しよう。(※率系項目の先発は100投球回以上23人、救援は30投球回以上37人、捕手は500イニング以上7人が対象)

◯対左打者被打率
【先発】
1菊池雄星(西武) .213
2東浜巨(ソフトバンク) .225
3岸孝之(楽天) .230

【救援】
1二保旭(ソフトバンク) .176
2高梨雄平(楽天) .177
3嘉弥真新也(ソフトバンク) .181

 菊池は被打率こそ先発でベストだが、プロ入りから昨季まで8被本塁打に抑えた左打者相手に、今季は5被弾した。二保は対左が51打数9安打で、浴びた長打も2本塁打のみ。右打者に被打率.381だっただけに「対左のスペシャリスト」ぶりが際立つ。嘉弥真は「パーソル CS パ」と「SMBC日本シリーズ 2018」で左打者12人を1安打に封じた。

◯得点圏被打率
【先発】
1榎田大樹(西武) .179
2千賀滉大(ソフトバンク) .198
3東浜巨(ソフトバンク) .207

【救援】
1青山浩二(楽天) .098
2宋家豪(楽天) .135
3宮西尚生(日本ハム) .159

 走者の有無で被打率.235/.289と別人のようだった榎田は、得点圏でさらに肝っ玉の大きさを見せた。千賀が有走者時に記録した64奪三振はリーグ最多。救援でランクインした3投手は被打率の低さに加えて、いずれも被長打0の投球内容。逆に、多和田(西武)は被打率.356とピンチで打ち込まれたが、課題改善でさらなる飛躍の可能性を残している。

千賀は奪三振王の則本を上回る奪三振率を記録

◯奪三振率
【先発】
1千賀滉大(ソフトバンク) 10.40
2則本昂大(楽天) 9.33
3岸孝之(楽天) 9.00

【救援】
1ヒース(西武) 12.03
2松井裕樹(楽天) 11.96
3モイネロ(ソフトバンク) 11.35

 千賀は1軍の先発ローテーションに定着した2016年以降で自己ベスト。5年連続で奪三振王に輝いた則本の数値を上回った。2人が記録した2桁奪三振6回は、今季のリーグ最多。楽天の上記3人が積み重ねた437奪三振は、チーム全体の約4割に及ぶ。10月4日に14三振を奪った松井がフルシーズンで先発すれば、過半数到達も夢ではないか。

◯与四球率
【先発】
1有原航平(日本ハム) 1.10
2岸孝之(楽天) 1.64
3アルバース(オリックス) 1.66

【救援】
1比嘉幹貴(オリックス) 1.78
2ヒース(西武) 1.82
3澤田圭佑(オリックス) 1.99

 大量失点する登板が目立った有原だが、与四球3以上を前年の7試合から1試合だけに減らし、シーズン合計もわずか15個にとどめている。岸とアルバースは無四球の試合で黒星がつかず、2ストライク時の全4カウントでいずれも被打率1割台。十亀(西武)は無四球が20先発中2試合だけで、先発ワーストの与四球率4.08と乱れた。

◯平均投球回
【先発】
1菊池雄星(西武) 7.12
2岸孝之(楽天) 6.91
3涌井秀章(ロッテ) 6.85

【救援】
1岡本健(ソフトバンク) 1.56
2チェン・グァンユウ(ロッテ) 1.47
3玉井大翔(日本ハム) 1.20

 故障に苦しんだ菊池だが、6回未満での降板は1度だけと意地を見せた。平均投球数は117.46の則本(楽天)が最多。岡本は23救援中9試合で2回以上を投げてチームを支え、チェン・グァンユウは最長5回もこなした。チーム別では、楽天と西武の先発陣が平均6.00回、オリックスの救援陣が3.30回で最多だった。

見逃し奪三振王は岸、空振り奪三振王は則本

◯見逃し奪三振
1岸孝之(楽天) 59
2則本昂大(楽天) 44
3千賀滉大(ソフトバンク) 39

 内外、捕手の構えたミットをピンポイントで射抜く。打者にバットを出させずして三振を奪うのが、ボールのキレと精度の高さで勝負する岸の真骨頂だ。全三振に占める割合37.3%も最高で、榎田(西武)が31.6%、アルバース(オリックス)が31.3%、西(オリックス)が31.1%と続く。リーグ全体の三振数における見逃し三振の割合は21.4%だった。

◯空振り奪三振
1則本昂大(楽天) 141
2菊池雄星(西武) 128
3千賀滉大(ソフトバンク) 123

 追い込んだら低めに落ちるボールを投じて、しっかりと空振りを奪うのが則本のピッチングスタイルだ。全三振に占める最高割合94.4%を記録した金子千尋投手(オリックス)は、前年に33あった見逃し奪三振が4のみと大幅に減っている。救援では松井(楽天)も94.4%の高率で、空振り奪三振85に対して見逃し奪三振はわずか5だけだった。

◯併殺打
1榎田大樹(西武) 19
2山岡泰輔(オリックス) 17
3多和田真三郎(西武) 16
3ウルフ(西武) 16

 リーグ優勝を果たした西武の3投手がランクイン。チームはリーグ最多の87失策を喫したが、併殺参加機会392は同1位で、遊撃手の源田を中心に内野陣がうまく援護した。榎田、多和田は併殺を奪える機会がそれぞれ138回、133回あったが、ウルフはわずか70回での記録。フライ系投手の田嶋(オリックス)は併殺打が2つだけだった。

◯捕手盗塁阻止率
1甲斐拓也(ソフトバンク) .447
2森友哉(西武) .373
3田村龍弘(ロッテ) .320

 被盗塁企図数50以上の捕手では、日本シリーズの活躍も記憶に新しい甲斐が最高阻止率を記録。盗塁阻止は投手との「共同作業」ではあるが、課題は6つの三盗を全て許した点だろうか。ともあれ他5球団のチーム阻止率がいずれも2割台のなか、その貢献度の高さが際立ったのは確かだ。田村は盗塁刺39回と捕手けん制刺3回がいずれもリーグ最多を記録した。(「パ・リーグ インサイト」藤原彬)

(記事提供:パ・リーグ インサイト)

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