【平成の長崎】「よくやった。長崎の誇りだ」 小さな町の小さな学校の快進撃 平成17(2005)年

 清峰の最終打者、古川投手のバットが空を切った。試合終了。3度目の奇跡は起きなかった。第87回全国高校野球選手権大会第11日の8月16日、長崎県代表の清峰は、優勝候補筆頭の大阪桐蔭(大阪)に1ー4で惜敗。だが、練習環境さえ十分でない小さな町の小さな学校が、地元の生徒だけを集め初めての甲子園に乗り込み、強豪校と堂々と渡り合う姿は、長崎県民ばかりでなく全国の高校野球ファンに大きな感動を与えた。清峰ナインはこの日、県大会を通じ初めての涙を流した。スタンドから送られるひときわ大きな拍手と歓声は長いこと鳴りやまなかった。

 約3500人が詰め掛けた3塁側アルプススタンド。清峰高応援団は最後の1球までナインに大声援を送った。「頑張れ古川!あきらめるな清峰」。チームカラーの緑のメガホンを打ち鳴らし、声をからして選手を後押しした。

 優勝候補を追い詰めたが、一歩及ばなかった。涙でスタンドに頭を下げるナインを「よくやった胸を張れ。長崎の誇りだ」と大拍手で包んだ。

 大型バスを連ねた清峰高応援団は14日の2回戦後、すぐに帰省。翌日の午前6時に佐々町に到着し、午後10時に再び甲子園に向かう過密スケジュール。吉田監督の妻、ひとみさん(36)も息子の健人くん(8つ)と娘の真由ちゃん(6つ)を連れて観戦した。

 初回に3点を先制され苦しい展開。応援団長の池田和希君(17)は「県大会はもっと逆境だった。これからだ」と、スタンドを盛り上げた。9回に大石剛主将の本塁打で待望の1点。父親の光春さん(42)は「勝負強い子。打つと信じていた」と興奮気味だった。佐々町の小田村進助役(71)は「全国の強豪に引けを取ってない。来年も勝ち上がってほしい」と賛辞を惜しまなかった。
(平成17年8月17日付長崎新聞より)
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【平成の長崎】は長崎県内の平成30年間を写真で振り返る特別企画です。

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