「レベルアップしたな」―新井貴浩氏が広島野間&西川に注ぐ熱く、優しい視線

広島・野間、西川の活躍について語った新井貴浩氏【写真提供:DAZN「Home of Baseball」】

丸の故障離脱でつかんだチャンスをがっちりものにした野間

 2018年シーズンを最後に、20年間の現役生活にピリオドを打った広島の新井貴浩氏。DAZNでは、オフの新番組「Home of Baseball」の配信を2日から開始し、その中で新井へのロングインタビューを行った。2016年に現役引退した黒田博樹氏とともに、広島のレジェンドとして巨人に続く2球団目となるセ・リーグ3連覇に貢献した新井氏が、カープへのチーム愛、選手たちとの絆、自らの歩んできた道について語り尽くした。第4回は、主力選手の故障や不振の穴を埋めて余りある活躍を見せた若手の野間峻祥、西川龍馬について語っている。

 足の引っ張り合いはしなくても、レギュラー陣が故障などで離脱した際は、若手選手にとって格好のアピールの場となるのは間違いない。今シーズン、丸が故障離脱した際に代役として大活躍したのが野間峻祥外野手。もともと代走や守備固めで使われていたが、打撃にも大きな進歩を見せ、丸の復帰後も外野の一角を奪取。さらには田中広輔の不調で1番に抜擢されるなど、初の規定打席に達して打率.286、5本塁打、46打点、17盗塁をマーク。2014年のドラフト1位が、ついにその力を発揮した。

「(野間は)守ること、走ることはもう、すでに球界でトップクラスですからね。課題のバッティングが思うようにはいってなかったんですけども、今年何かつかんだんじゃないんですかね。見送り方とかそういうところを見ても、レベルアップしたなと思いました」。

 丸の離脱によって生まれたチャンスを自らつかみ取り、プロ入り4年目でレギュラーの座を確保した。

「丸がケガしたことによって、彼(野間)の試合に出る、打席に立つ回数が増えてきたんですね。たくさん打席に立つ中で、だんだんと自分の中で『こういう感じなのかな』っていうのをわかりかけてるんじゃないんですかね。スタメンで試合に出られるということは、だいたい4打席ありますから、その中で修正も効くんですよね。そういう気持ち的な余裕も、同時にちょっとずつ出てきてたのではないでしょうか」

安部の不振でレギュラーを奪取した西川、だが三塁の守備に悩みが…

 そして内野では、昨年リーグ4位の打率.310を打った三塁手の安部友弘が離脱し、その代役となった西川龍馬がブレーク。規定打席には届かなかったものの、打率.309、6本塁打、46打点、5盗塁と持ち味を発揮し、復帰後も調子が上向かず打率.236、4本塁打、24打点に終わった安部にとって代わってのし上がった。

 今年は侍ジャパンにも選出され、まさに飛躍の年となった西川は三塁を守るだけに、同じ三塁手だった新井氏も思い入れがある。

「彼(西川)は天才的なバットコントロールをしています。びっくりするようなボール球を打ったり、当てたりしますからね。もともと、天才的な感覚でやってたんですけれども、それがちょっと崩れると、(不振の期間が)長くなる。もともと感覚がすごくいい選手なので、(自分の状態が)どうなっているか、これからどうなるかというのが、少しわかってきたんじゃないでしょうか。自分を客観視できるようになってきたというか。だから、そういう面ではまたレベルアップしてますよね」

 打撃に関しては天才肌の西川だが、新井氏は守備面も気にかけている。

「僕も、守備がうまい方ではない。彼もなかなか守備で苦労してたので、本当に気持ちが分かりましたね。全然ダメな時っていうのは、『自分のところに飛んでくるな』というぐらいに思ってしまいますからね。だから、そういう時でも、エラーしても思い切って攻めていったほうが良いんじゃないかとか、そういう話はちょくちょくしていました」

 西川の課題は守備にある。今シーズンの失策は17で、セ・リーグの三塁手としては宮崎敏郎(DeNA)の11を引き離す圧倒的なトップの数字だ。

「『自分でも怖いです』と正直に言ってくれるんで、『オレもよくわかるよ、その気持ちはね。でも試合出たらやるしかないんだから』と話していました」。

若手がつまづいた時、適切なタイミングで適切なアドバイス

 4番を受け継いだ鈴木に対してもそうだが、新井氏は自分からアドバイスしに行くようなことはしない。しかし、若手が躓いたり、問題の解決法を見失った時には、適切なタイミングで適切なアドバイスをする。それが新井氏の存在を際立たせ、カープの精神的支柱となっていた所以だ。

「(西川と)ちょっと話したんですが、秋のキャンプは、とにかく練習受けるしかないぞって。とにかく数を受けてドロドロになって汗かいて、たくさんやってやってやってやって気づいたらちょっとうまくなってた……っていうぐらいだから、とにかく秋のキャンプは守備しっかりやったほうが良いぞって話しました」

 泥にまみれて現在の地位を築き上げた練習の虫・新井氏らしい、熱く、それでいて優しいまなざしが、伸び盛りの若手に注がれていた。(Full-Count編集部)

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