日立金属、硬質粒子分散型Cr基合金を開発 耐食性・耐土砂摩耗性を両立、掘削機器を長寿命化

 日立金属は3日、日立製作所の研究開発グループの協力のもと、地下資源採掘機器向けに耐食性、耐土砂摩耗性、施工性に優れた硬質粒子分散型クロム基合金を開発したと発表した。掘削機器の部品表面に同合金を肉盛することで、機器の長寿命化や保守作業の軽減に寄与する。来年2月から金属粉末のサンプル出荷を開始し、ユーザーの評価を得て実用化を進める。

 日立製作所が開発した高耐食のクロム基合金をベースに、日立金属が硬質粒子(クロム炭化物、クロムホウ化物など)を分散させて耐土砂摩耗性を向上させた。金属生地中に高濃度のクロムを含有して高い耐食性を維持しつつ、土砂よりも高硬度の硬質粒子を分散させることで耐土砂摩耗性を向上。コバルト基合金に比べ10倍以上の耐食性と2倍以上の耐土砂摩耗性を兼ね備えていることを社内試験で確認し、溶接施工後に割れが生じないことも確認した。

 油井の原油回収に使用される人工ポンプ機器の摺動部品には、耐食性、耐土砂摩耗性に優れたコバルト基合金などの表面強化用材料が施工され、必要に応じて部品の保守や交換が行われる。近年、採掘速度の向上や大深度採掘、より厳しい腐食環境下での採掘により部品の寿命が短くなり、交換頻度が多くなっている。

 従来のコバルト基合金をはじめとした材料は、金属生地に含まれる硬質粒子が耐土砂摩耗性を担っているが、一般的に硬質粒子の形成過程で金属生地の耐食性を担う元素が減少して金属生地の耐食性が低下するため、耐土砂摩耗性の高い合金ほど耐食性が低くなる課題がある。またコストや資源の観点からもコバルトを含まない材料が望まれている。

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