【現場を歩く】〈山本工作所・本社工場〉鋼製ドラム200リットル缶・小型缶の製造拠点、多彩な切り口で業務効率化

品質要求・安定供給に知恵、時代の要請に応じ事業領域を拡大

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 山本工作所(本社・北九州市八幡東区、社長・山本和男氏)は1946年(昭21)5月の創業以来、北九州エリアに本拠を構える。八幡製鉄所のお膝元で事業領域を拡充してきた一方、1948年(昭23)11月の初受注から生産を続ける鋼製ドラム缶は、今日においても中核事業として全社をけん引する。供給の基幹を担う本社工場を訪ね、名実とも「変化に対応し、常に新しい価値を創りだすことにより、広く社会に貢献する」との経営理念の実現に挑む現場を歩いた。(中野 裕介)

 現在地に全面移転から30余年

 北九州市の北西部、洞海湾を臨む枝光地区。新日鉄住金八幡製鉄所や同社の関連企業が操業するエリアに、山本工作所の本社工場は立地する。農機具部品や日用品に続いて、バケツ、米櫃(びつ)やカーバイト缶などの製造販売を足がかりに戸畑市(現在の北九州市戸畑区)で発足し、米軍の特需を契機に全国屈指のドラム缶メーカーへと成長。1987年(昭62)に八幡製鉄所の旧牧山成品倉庫跡地を取得し、現在地に本社・工場と中原工場(当時)を全面移転してから30余年の歳月がたつ。

 本社と工場を構える敷地は全体で約8万平方メートルに上り、五つの建屋(総面積2万2580平方メートル)が立ち並ぶ。このうち製缶工場が1万4300平方メートルと最も広く、構内には200リットルと小型(10~100リットル)のドラム缶を製造するラインが1基ずつ稼働する。200リットルのドラム缶10万本、小型のドラム缶5万本の月産能力を有し、九州や隣接する地域に対し、主力の化学・薬品向けをはじめ、石油と塗料、食品といった需要分野に出荷。もう一つのドラム缶の製造拠点、大牟田事業所(福岡県大牟田市)に天板と地板を供給している。

 常に新しい視点で技術・製品を開発

 「常に新しい視点で技術や製品の開発、品質の向上と環境保全に努めている」―。山本工作所の生産現場では、かねてから全社で追求する前述の言葉を着実に具現化する。これまでの実績に目を向けると、200リットル缶、小型缶とも、胴の溶接部や天地板・巻き締め部を検査する工程において、国内メーカーで初めてヘリウムガス式リークテスター(漏洩検査装置)を導入したのをはじめ、小型缶では危険物の収納・運搬に必要な検査証「UNマーク」や製造番号といった基本情報をインクジェットで印字。また、200リットル缶では、スタンプ印字した表面を素早く乾かせるようIH(誘導加熱)技術を取り入れたほか、今年10月には地板の外観検査装置を導入し、年内稼働を目指すなど、細部にわたって最終製品の精度を高める工夫を凝らす。

 生産効率の観点でも設備の特徴が随所に表れる。天板と地板を抜き絞り成形するプレス機は、金型を2台備えて千鳥抜きの同時加工に対応。区切りの工程で所定の時間に処理を終えた製品の本数をデジタル表示するほか、主要工程では不具合の発生を見逃さないよう一部の装置に監視カメラを取り付けるなど可視化を進める。直近では各工程にタブレット端末を配布。作業者がリアルタイムで製品の仕様書を確認できるのはもとより、事務所との行き来を減らし、ペーパーレス化につなげるなど、多彩な切り口で業務改善に取り組む。

 全員参加の改善提案、「SQC」に主眼

 とりわけハード面でのさまざまな取り組みを支えるのが、全員参加で臨む独自の改善提案活動だ。その名も「山本工作所」の英語表記から頭文字を取って名付けた「YJK活動(山本工作所・自主管理)」。本社と工場、大牟田事業所を合わせた九つのセクションで提案を出し合い、一人当たりの件数を評価する仕組みになっている。並行して各工程では、安全(S)と品質(Q)、コスト(C)に主眼を置き、持ち場における課題の洗い出しとその後の進ちょくをまとめ、誰もが閲覧できる掲示板で情報を共有する。定期的に提出するレポートを通じて、全社的な活動方針から工場長、作業長、担当者とそれぞれの視点で現状に対する認識を深めることで、技術の伝承と革新につなげる。

 本社工場では時代の要請に応じて、集塵装置やチューブラコンベヤをはじめとする輸送装置の開発・製造・販売、セメント工場向け設備保全、自動車関連事業などに事業領域を広げてきた。

 これに対しドラム缶事業は、生産に乗りだして70年の歳月を越えてなお「全社的にも大黒柱」(山本社長)に位置づけられ、取引先からの品質要求と安定供給に知恵を絞る。さらなる飛躍に向けて、工夫された新旧の設備と従事する社員の不断の努力により、揺るぎない競争力を醸成し続けていく。

山本工作所、往時を刻む鉄鋼製品を展示

 戦後間もなく創業した山本工作所。事務所棟のエントランスには、往時を刻む鉄鋼製品が展示されている。真ちゅうのバケツや亜鉛引き鉄板の米櫃といった時代背景を象徴する生活用品をはじめ、1950年(昭25)に製造したドラム缶や、現在の本社工場で生産した第1号の記念に保存しているドラム缶が並ぶ。